パリオリンピック女子レスリング 藤波朱理の強さの理由を先輩オリンピアンが振り返る
まさに「無敵」だった。
20歳という若さで、オリンピック初出場とは思えない強さとパフォーマンスを披露した女子53kg級の藤波朱理(日体大)は、1回戦から決勝まですべての試合をフォールとテクニカルスペリオリティー(旧・テクニカルフォール)で締めくくり、圧倒的な強さで金メダルを勝ち取った。
相手を淡々と攻略し、お手本のようなタックルや数々の技を適宜仕掛けていく姿は、思わずため息が出るほどに見事で、いつまでも見ていたくなる試合ばかりだった。
公式戦137連勝で五輪金メダルを獲得した藤波朱理 photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る 4歳の頃から元選手である父・俊一さんのもとでレスリングを始めた藤波は、兄の勇飛もフリースタイル70kg級の世界選手権銅メダリストという、レスリング一家で育った。
それでも、父に無理に強いられたことはなかったという藤波にとって、レスリングは気づけば当たり前で、なくてはならない、自分を最大限に輝かせるものとなっていた。
そんな彼女は高校2年生の時、2020年全日本レスリング選手権でシニア大会デビューしていきなり優勝すると、翌年の全日本選抜選手権でも頂点を勝ち取り、初めて世界選手権への切符を手にした。
藤波の勢いはとどまるところを知らず、初出場の世界選手権では全試合テクニカルフォールの圧倒的な強さで優勝。以降の国内外の大会も無敗が続き、いつしかその連勝記録が注目されるようになった。
かつての絶対女王・吉田沙保里の連勝記録も塗り替え、パリ五輪でも優勝を果たし、いまだ記録更新中の藤波について、「強くなることにすごく貪欲な選手」と話すのは、東京五輪・女子76kg級の皆川博恵さんだ。
「私が自社(クリナップ)所属の選手を指導するため、日体大に行った時のことです。私とは体重差が20kgもあるのに、藤波さんはスパーリングをお願いにきてくれて、とても驚いたのを覚えています」
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