井上尚弥のネリ対策の相手をした、いとこ・浩樹は「想定どおり」ダウン後の戦いは「人間離れしていて恐怖すら覚える」 (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

――試合の立ち上がりは、尚弥選手の右のオーバーハンドが印象に残りました。何か狙いがあったのでしょうか?

「ネリはグイグイと前にプレッシャーをかけてくるタイプなので、強いパンチを警戒させてネリが入ってくるのを阻止する、あるいは、少しでも軽減させる狙いがあったんじゃないかと思います。簡単に言えば、"ビビらせるため"なんじゃないかと」

――立ち上がりとしては悪くなかった?

「1ラウンドの立ち上がりにしては、少し雑な部分もあったかもしれません。左ボディーを打ってから大きな右フックを打とうとしていたのですが、右ストレートのほうがよかったかもしれない。ちょっとパンチが大きくなったことで、その後のタイミングがズレてしまったようにも見えます」

――開始1分40秒、ネリの左フックをもらった尚弥選手がプロ初のダウン。誰もが驚いた瞬間でしたが、浩樹選手の心境は?

「僕も初めて見る光景なので、何が起こったかわからないという感じでした。あの日は、(2試合前に行なわれた石田匠と戦った井上)拓真のダウンもありましたが、『まさか......』という言葉しか出てこなかったですね。尚弥さんに聞こえたかどうかはわからないですけど、『落ちついて!落ちついて!』と声をかけるしかありませんでした」

――セコンドからの指示は?

「セコンドも『大丈夫、大丈夫。1回落ちつこう』という感じでした。ただ、ダウンしたあとの対処がすごく冷静だったので、すぐに『大丈夫そうだな』となりましたが」

――ダウンを喫したのが初めての経験だったにもかかわらず、尚弥選手が冷静にカウント8まで使って回復を図ったことが高く評価されました。普段から、"万が一"も想定して練習しているのでしょうか。

「そういったことは見たことがないですね。でも、頭のなかではあらゆることを想定していたんでしょう」

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