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寺地拳四朗「今日は倒せないかもしれない」...TKO勝利の裏でよぎった弱気をどう立て直したのか (3ページ目)

  • 会津泰成●文・取材 text by Aizu Yasunari
  • ヤナガワゴーッ!●撮影

【加藤さんが辞めたら僕も辞めようと思っています】

 一方、トレーナーの加藤も、拳四朗の進化を確実に実感しつつ「準備段階でも試合でも、課題が見つかりました。『果たしてこれでいいのかな』という疑問はそのまま残さないようにしたい」と気を引き締めた。加藤は、その日のうちに3度試合映像を見返すなど、すでに次の戦いに向けた準備を始めていた。

 勝利後のインタビュー、真っ先に「僕のチームに拍手をプレゼントしてください!」と答えた拳四朗にあらためてチームの存在、加藤について聞いた。

「もし今のチームでなくなってしまえば、戦い方がわからなくなるんじゃないですかね。スランプに陥ったら、迷子になって終わる気がします。原因を見つけてくれる人がいなくなるので。で、たぶんどんどん落ちていく一方だと思います。加藤さんが辞めたら、僕も辞めようと思っています」

 冗談とも本気ともとれるような口調でそう答えた。

 横で聞いていた加藤は「いやいや」と少し照れ臭そうな仕草をしたあと、「まあでも、拳四朗は信じる力が強いというか、とても素直なので、いなくなればいなくなったで、自分の成長にとって必要な何かを見つけて、それを信じて取り組み、成長し続けるはずです」と笑った。

先のことは誰にもわからないが、センスや技術に加え、愚直なまでに信じる力を持つボクサーと、緻密な分析に基づいて入念に作戦を立て、ブレずに実行できるトレーナーのコンビは、これからも変わらず名勝負を届けてくれるに違いない。

 拳四朗が見据えるのは、井上尚弥に次ぐ日本人2人目の4団体統一。そして2階級制覇も十分可能な目標として同じように捉えていた。そんな拳四朗をプロモーターという立場で支える三迫ジムの三迫貴志会長は、将来的なある仰天プランについて明かした。

後編「寺地拳四朗から那須川天心への伝言」>>

Profile
寺地拳四朗(てらじ けんしろう)
1992年1月6日生まれ、京都府出身。プロ戦績は23戦22勝(14KO)1敗。
元日本ミドル級王者で、元OPBF東洋太平洋ライトヘビー級王者の寺地永を父に持ち、中学3年からボクシングを始めた。大学卒業後プロテストに合格し、その年の8月にプロデビューした。2017年、WBC世界ライトフライ級王座を獲得。2021年4月までに8度の防衛に成功したが、9度目で矢吹正道に敗れた。昨年、王座を奪い返すと、京口紘人とのWBA、WBC世界ライトフライ級王座統一戦でも見事勝利。今回のブドラー戦でWBA2度目、WBC3度目の防衛に成功した。

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