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井上尚弥はスーパーバンタム級での4団体統一、6階級制覇も可能?内山高志が語る「モンスター」の止まらぬ進化 (2ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • photo by 東京スポーツ/アフロ

 その後、同級最強を証明すべく、複数の王者や上位ランカーが集うワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)に参戦する。2019年5月の準決勝で、IBFの無敗王者だったエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を破って2本目のベルトを獲得。同年11月の決勝戦は、5階級制覇王者のノニト・ドネアを激闘の末に下して優勝。2022年6月7日には、ドネアとの再戦を2ラウンドTKO勝利で飾り、WBCのベルトも巻いた。そして最後に、WBOのベルトを獲得して凱歌を上げた。

 バンタム級で戦い始めてからの井上の進化について、内山氏は「もっとも顕著なのはパワー」と語る。

「最初に世界王者となったライトフライ級(-48.9キロ)の頃は、減量苦からか本来の力が出し切れなかった印象がありました。そこから、スーパーフライ級(-52.1キロ)、バンタム級(-53.5キロ)と階級を上げるにつれて、パフォーマンス、特にパワーが上がったと思います。

 井上選手は普段は体が大きく、体重は60キロ台前半。そこから10キロくらい減量をして、最後は水分を抜くことになります。試合前に極限まで削り落とす井上選手は、1.4キロ増量することで本来の力に近づいたのではないでしょうか」

 バトラーとの一戦を終え、井上のプロ戦績は24戦全勝。そのうち21戦がKO勝ちという驚異的なKO率を誇る。内山氏は「シンプルに格闘家として強い。ボクシングの技術もメンタルも超一流です。相手が誰であろうと慢心や過信をせず、万全な状態でリングに上がる。試合前に必ずささやかれる『勝負は何があるかわからない』『こういう時こそ危ない』といった不安の声を、すべて杞憂へと変えてきました」と、ボクシングに向き合う姿勢を評価。また、技術面についてこう続けた。

「スピードがずば抜けていて、ステップインであっという間に相手の懐に入れますし、バックステップすれば相手の距離から一瞬で外れられる。ハンドスピードも速く正確です。パンチはジャブ、ボディー、ストレート、フック、すべてのパンチが決定打になる破壊力がある。左ジャブひとつをとっても、強弱、角度、種類も非常に多彩ですね。相手はすべてのパンチを警戒しなければならないですから、相当に厳しいですよ」

 その圧倒的な攻撃力については、バトラーも試合後に「パンチが速すぎて対応しきれなかった」「パンチ力が強い」と脱帽した。

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