井上尚弥はスーパーバンタム級での4団体統一、6階級制覇も可能?内山高志が語る「モンスター」の止まらぬ進化 (3ページ目)

  • 篠崎貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro
  • photo by 東京スポーツ/アフロ

【ディフェンスも一級品「位置取り・距離が完璧」】

 試合前にバトラー陣営は、井上の弱点としてディフェンスを挙げていた。しかし、いざ試合になると、井上はスウェー(上体を後ろに反らせて避ける技術)やスリッピング・アウェー(パンチが伸びる方向に顔を背けてパンチを避けたり、衝撃を小さくしたりする技術)で、バトラーのパンチをことごとくかわした。内山氏は、「井上選手のディフェンス能力は、弱点どころかストロングポイント」だと指摘する。

「ディフェンスがいいということは、ポジショニングが完璧だということ。井上選手は相手がパンチを打てない場所、打っても強打にならない場所にいる。そして自分が打った後には、必ず頭を動かして的を絞らせない。そうした基本的な動きを試合中もきっちりやっています」

 バトラー戦の中盤、井上は両腕をだらりと下げてノーガードの体勢を取ったり、ロイ・ジョーンズ・ジュニア(ミドル級からヘビー級の4階級を制覇した名王者)を彷彿とさせるスタイルで、両手を後ろに組んで顔を突き出したりしてみせた。しかし内山氏は、「ノーガードでも、バトラーが打ちに行けば、その刹那カウンターを合わせるスピードがあります。それがわかっているから、バトラーもうかつに手を出せなかったんでしょう」と、井上の攻撃力は防御にもつながっていると語った。

 また、距離感については「6ラウンドにノーガードの井上選手が、バトラーが前に出て打とうか、という瞬間に少し下がる行動を繰り返して、結果的に一発もパンチを出させなかったシーンがありました。あれも、相手の攻撃が届く距離を絶妙なタイミングで外しています。相手の攻撃が届く距離も、自分の攻撃が活きる距離もわかっている井上選手だからこそできることです」と称賛した。

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