19歳の慶應ガールがレスリング五輪金メダリストを撃破。尾﨑野乃香は高らかに宣言「62キロ級は私の階級」 (3ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

パリ五輪まで頂点を守り抜く

 昨年初めて出場した世界選手権、尾﨑は初戦で東京オリンピック銀メダリストのアイスルー・ティニベコワ(キルギス)と対戦し、序盤で4−0とリードを奪うが、不用意に攻め込み、カウンター攻撃を食らって逆転負け。敗者復活を勝ち上がって銅メダルを獲得したものの、敗戦の後悔だけが残った。

「あの時の悔しさは今も忘れられません。リードしていたのになぜ、あんな中途半端な攻撃をしかけたのか......。それでも、あの敗戦で多くのことを学ぶことができ、おかげで成長しました。

 メンタルも強くなったと思います。レスリングはもちろん自分のためにやっているんですが、応援してくれる人のためにも、もっと頑張らなくてはと考えるようになりました。勝って、勝って、恩返ししたいじゃないですか」

 今年4月にモンゴル・ウランバードルで開かれたアジア選手権、尾?は世界王者ティニベコワにリベンジを果たして優勝を飾った。そして今回、東京オリンピック金メダリストにも勝った。尾﨑の次なる課題は「技の精度を上げること」だと言う。

「技に入る時、ほんの少しの角度や頭、手、足の位置......それが本当に大事だと最近痛感しています。それができて技から技への展開がよくなれば。自分のスタイルを極めることができて、どんな選手が相手でも攻め込める。そうなれば、世界でも自信を持って戦えると思います」

 尾﨑が描く青写真はこうだ。今年9月の世界選手権で優勝し、12月の天皇杯、来年6月の明治杯を制して再び代表となって世界選手権を連覇。そして2024年パリオリンピックの出場権を獲得し、最後は金メダルを掴む。

 彼女は高らかに宣言した。

「女子62キロ級は自分の階級。世界中の人たちから『62キロ級は尾﨑の階級』と言われるようにして、パリオリンピックまで守り抜く」

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