藤波辰爾と激闘した外国人レスラー。大流血したチャボ戦とキッドの強力ヘッドバットを語る (2ページ目)

  • 松岡健治●取材・文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Yukio Hiraku/AFLO

 藤波がベルトを奪取して日本に凱旋帰国すると、チャボは好敵手として立ちはだかる。10度目の防衛戦となった寝屋川での61分3本勝負は、テレビで生中継された。

「あの試合は、僕が初めてメインイベントを務めた試合でした。猪木さんが放送席で解説を務めていたので、かなり緊張した思い出があります」

 1本目をチャボに取られて迎えた2本目。藤波は、メキシコ遠征時に身につけた必殺の場外ダイブ技「ドラゴン・ロケット」を繰り出す。しかしチャボによけられ、頭からパイプ椅子に激突して大流血するアクシデントが発生した。鮮血が滴るなか、藤波はダブルアームスープレックスでその2本目を奪う。

 出血量の多さから「ここでドクターストップか?」とも思われたが、試合は3本目に突入。藤波はチャボの猛攻を受けるも、力を振り絞ってコブラツイストを極める。藤波の額から流れる血がチャボの体をつたうなかで、ついにギブアップを奪って防衛に成功した。

「あの時のドラゴン・ロケットは、勢いよく突っ込んだはいいものの、気づいたら目の前に誰もいませんでした。当時は手足を真っすぐに伸ばして飛んでいて、僕の体も細かったですから、ウルトラマンのようだったんじゃないですかね(笑)。それで大流血して、痛みはなかったんですが、最後のコブラツイストの時に血がチャボの体に落ちたことは覚えていますよ。

 しかし、ドラゴン・ロケットの大失敗については、「今振り返ると、『よくぞよけてくれた』と思います」と話す。

「それまでドラゴン・ロケットは、百発百中で決まっていた技でした。毎試合当たっていれば、ファンとしても『この技は、必ず相手が受ける』という先入観ができてしまう。だからチャボがよけてくれたことで、『失敗するかもしれない』という緊張感が生まれたんじゃないかと」

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