東京五輪で金メダルの可能性大。
空手「形」男女のエースが圧巻の優勝

  • text by Sportiva
  • photo by Kyodo News

 日本武道館は異様な雰囲気に包まれていた。

 2020年東京五輪で初実施される、空手のプレミアリーグ東京大会の最終日(9月8日)。女子「形」の決勝で相まみえたのは、日本の絶対エースで2014年、2016年と世界選手権を2連覇した清水希容(しみず・きよう/ミキハウス)と、2018年の世界選手権決勝で清水の連覇を止めたサンドラ・サンチェス(スペイン)。互いにもっとも得意とする、複雑な突きと蹴りを組み合わせた難易度の高い「チャタンヤラクーサンクー」を打ち合った試合は、歴史に残る名勝負になった。

形で優勝した女子の清水希容(左)と男子の喜友名諒(右)形で優勝した女子の清水希容(左)と男子の喜友名諒(右) スピード感あふれる動きと、技のキレで勝負する清水。対照的に、ダイナミックな動きから力強い技を繰り出すサンチェス。審判7人による採点で、共に30点満点で27.68点という高得点を叩き出し、最高点と最低点もまったく同じで勝敗がつかずに"空手史上初"の再試合にもつれ込んだ。

 相手と闘う「組手」に対して、「形」は攻防を想定し、ひとりで突き、蹴り、受けを組み合わせた演武を行なって勝敗を争う。昨年までは5人の審判による旗判定で勝敗が決まっていたが、東京五輪で実施されることを見据え、わかりやすくするために今年1月から7人の審判による採点で勝敗が決するようになった。

 採点項目は大きく2つに分類される。立ち方、技の動きや繰り出すタイミング、正確な呼吸法が行なえているか、などを評価する「技術点」と、力強さやスピード、バランスなどを評価する「競技点」だ。誤解を恐れずに言うならば、空手の形は"武道版のフィギュアスケート"のようなもの。わずかな乱れから演武が破綻する可能性もあり、体の隅々までコントロールする力と、極めて高い集中力が求められる競技である。

 東京五輪に出られるのは10人(1国につきひとり)だけ。2018年7月からの国際大会のポイントで順位づけられる「オリンピック・スタンディング」の、2020年4月6日時点での上位4人がまず確定し、2020年5月の予選大会を勝ち抜いた3人が追加、といったように5段階に分けて選考される。

 今大会前までのオリンピック・スタンディングで、清水は2位、サンチェスは1位。決勝はまさに"頂上決戦"だったのだ。

 決勝に進むには3次ラウンドまでを勝ち抜く必要があり、1度使った形はその大会で2度は使えない。それは再試合になっても同じである。

 にもかかわらず、清水とサンチェスは両者とも再試合を想定し、もうひとつの形を準備していた。清水が「サンドラ(・サンチェス)とはずっと競っていたので。0.1点を切る点差でずっと勝ったり負けたりを繰り返していたので、そろそろ再試合があるかなと思って練習していました」と語れば、サンチェスも「想定内。最近はとても僅差だったから、こういうことが起こると思っていて、次に演武する形は決めていました」と振り返った。

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