井上尚弥がWBSS後に「悪童」ネリと
戦う可能性はあるのか (2ページ目)
井上が下馬評どおりに、今秋に予定されているWBSS決勝でノニト・ドネア(フィリピン)を下した場合、"その後"の対戦相手候補の中でもっとも大きな話題となるのはネリに違いない。
WBC統一戦の形で今秋にも挙行される、ウバーリvs井上拓真の勝者にネリが挑戦し、それに勝てば"メキシコの悪童"は再びタイトルホルダーになる。そのあとに井上尚弥との統一戦が実現すれば、アメリカでもビッグビジネスになる。とくに、ネリが井上弟に勝って兄と戦うという流れになった場合、"井上尚弥による弟のリベンジマッチ"は、まるでハリウッド映画のような因縁の戦いになるだろう。
「日本で悪行を繰り返したネリを認めたくない」「ビッグファイトのチャンスを与えるべきではない」という日本のファンの心情は十分に理解できる。井上と、その陣営が同じ思いだとしたら、その姿勢がリスペクトされてしかるべき。筆者も「ネリと戦うべき」と提言する意図はない。
しかし一方で、"日本リングから追放された"というネリのヒストリーも、米リングでの井上戦を考えた場合には、興行面でプラスに働くことは指摘しておきたい。因縁の対決に興味を抱くのは、日本もアメリカも同じ。井上がアメリカでスターダムに躍り出るもっとも手っ取り早い方法は、悪役ネリを退治することなのである。
それでも、複数の関係者の話を総合すると、井上とネリの対戦が少なくとも2020年中に実現する可能性は高くなさそうだ。
その要因として、まず所属プロモーションの問題がある。井上がWBSS決勝後、噂どおりにトップランク社と契約するならば、PBC傘下のネリとのマッチメイクは難しくなる。もともとのネリのプロモーターであるザンファー・プロモーションズとトップランク社の関係が良好なのは救いだが、PBCのアル・ヘイモン、トップランク社のボブ・アラムというプロモーターの"2大巨頭"が不仲なのは痛い。
そして最大のネックとなるのが、やはりネリの素行の悪さだ。日本のファンはよく知っているだろうが、ネリの規律のなさはアメリカでも知られ始めている。7月20日のパヤノ戦でも、1度目の計量で0.5パウンド(約230グラム)オーバー。1時間後の再計量でパスしたものの、再び関係者は肝を冷しただろう。
パヤノ戦を取材した『ハンニバル・ボクシング』のショーン・ナム記者によると、ザンファー・プロモーションズのある関係者は、次のようにフラストレーションを露わにしていたという。
「ネリはとても頑固で、キャンプでも自分のやりたいようにやる。練習、食事も自分の望むまま。メキシコ人選手が体重調整のために栄養士を雇うことなどありえず、(とくにネリは)取り扱いが非常に難しい」
味方陣営にまでそう酷評されてしまうようであれば、今後、ビッグイベントの顔役になることは難しいだろう。
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