丸山城志郎と阿部一二三の交差する想い。
2人の死闘はこうして生まれた

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 4月7日の全日本選抜柔道体重別選手権・男子66キロ級の決勝は、両者の執念がぶつかり合う大激戦になった。

 勝ち上がったのは阿部一二三(日体大4年)と丸山城志郎(ミキハウス)。2017、18年の世界選手権を連覇した阿部は、昨年11月のグランドスラム大阪大会で優勝すれば、その時点で今年8月に開催される世界選手権の代表に内定されることになっていた。だが決勝で延長の末に敗れ、今年に入ってもグランドスラムパリ大会でまさかの初戦負けを喫するなど、やや陰りを見せていた。

 それに対して丸山は、グランドスラム大阪大会で阿部から巴投げで技ありを取って勝利し、内定に待ったをかけた。今年に入ってからもグランドスラムデュッセルドルフ大会で優勝し、世界選手権連覇で絶対的なリードを保っていた阿部と肩を並べる存在にまで成長した。

体重別選手権、男子66キロ級は丸山城志郎(写真左)が阿部一二三を破り優勝した体重別選手権、男子66キロ級は丸山城志郎(写真左)が阿部一二三を破り優勝した ともに、勝てば東京五輪に向けての争いで少しリードできるような状態。好調な丸山は1回戦を延長戦の末に袖つり込み腰で一本勝ちし、準決勝も開始23秒で巴投げを決めて一本勝ちするなど、危なげない勝ち上がりをしていた。

 阿部も1回戦の木戸清孝(天理大クラブ)との戦いでは、開始15秒に袖つり込み腰で技ありを取るなど、序盤からキレのある動きで激しく攻めていた。だが開始1分30秒くらいで互いに倒れてからもつれるなかで、木戸に腕ひしぎを決められかけて左腕を痛めてしまってから動きも若干鈍り、技ありが効いての優性勝ち。さらに準決勝はゴールデンスコアの延長戦に入ったあと、相手を追い込んで指導を2回出させて反則勝ちとなったが、6分58秒を戦った。

 そして決勝は、互いに技を出し合う白熱した戦いになった。1分56秒に丸山に指導が出されたが、4分間で決着はつかず。ゴールデンスコアに入っての延長戦も互いに技を出し合うなか、やや劣勢になった丸山が1分37秒でふたつ目の指導を出され、もう1つで反則負けになるという状況になった。

 それでも丸山に焦りはなかった。

「本当にただ投げて勝つという気持ちだったので......(あと1枚で反則負けの状況になっても)投げて勝つという気持ちを持ち続けられた」

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