勝ち負けに執着しなかった伊調馨が、「勝ち」にやりがいを見出した (4ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 来年6月、明治杯全日本選抜選手権がある。そこで勝って、代表決定プレーオフを制して、世界選手権へ行けばいい。今年12月、勝てたほうがいいに決まっているけど、負けたら開き直ればいい。

 私には先がある。選抜までには、まだ8カ月ある。その間に国際大会などに出て、強くなればいい。負けてきついのは向こう。負けられないのは梨紗子。負けたら、もうあとがなくなる」

 川井がオリンピック階級の57キロ級に予想どおり落とし、伊調と同じ階級で挑んでくることになれば、実に4年ぶりの対戦となる。

 2014年12月23日に行なわれた、4年前の全日本選手権決勝。最愛の母が亡くなってから、わずか25日――。失意のどん底から這い上がった伊調は、「どんな状況でも試合に出ろ! 出るからには勝て!」という母の遺言を守り、川井梨紗子に6-0で完封勝ちした。

 自分のためだけではなく、自分を応援してくれる人たちのために戦う決意をした伊調馨。世界でもっとも過酷な国内予選を勝ち抜き、東京オリンピックへ突き進むことができるか。

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