村田諒太らチャンプが輩出。京都廣学館ボクシング部が育む「拳の哲学」 (5ページ目)

  • 内田暁●取材・文・撮影 text by Uchida Akatsuki

高校時代の村田諒太のパネルも飾られていた高校時代の村田諒太のパネルも飾られていた「高校の恩師が言っていたことですけど、『ボクシングで試合に勝つってことは、相手を踏みにじって、その上に自分が立つということだ。だから勝つ人間は、その責任が伴うんだ』と言われました。彼(対戦相手のアッサン・エンダム)の分の責任を伴って、これからも戦いたいと思います」

 村田が感銘を受け、西嶋先生が受け継ぎ、未来へと伝える「武元イズム」は、現在リングに立つ部員たちが紡(つむ)ぐことで、伝統として命を得る。現主将の中谷七都は、「基本はいつまでも大切。鏡を見て、フォームをチェックし、後はひたすら反復練習です」と、ボクシング上達の精髄(せいずい)を語った。また、下級生たちに不条理を強いることを部員にも禁じる一方で、やるべきこと......たとえば「練習前に水を用意する」などの決まりを下級生が怠れば、雷を落とすことも忘れない。

 部のエースで来年の主将候補の仲山翔梧は、父親も南京都高校出身で、卒業後にプロボクサーになった親子鷹。中学3年生のときに「いじめられないため」に始めたボクシングは、父親と拳で会話を交わす手段ともなる。

「ボクシングで一番楽しいのは、父親とミット打ちをやるとき。共感し合える感じがするんです」

5 / 7

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る