快挙ならずも「アイツは化け物」と呼ばれる
柔道・飯田健太郎のスター性

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Yutaka/AFLO SPORT

 講道館杯100キロ級決勝を見ていて、脳裏をよぎったのは12年前の同大会、同階級の決勝だ。

 優勝候補と目されていた穴井隆将に、国士舘高校3年生だった石井慧が挑んだ試合。石井は開始から穴井に柔道をさせてもらえず、「指導」の反則や技によるポイントを先行され、穴井のペースで試合は進んだ。しかし終盤、石井の豪快な大外刈りが炸裂し、大逆転勝利。史上3人目の高校生王者となり、石井はその後の4年間、快進撃を続けて北京五輪金メダリスト(階級は100キロ超級)となった。

講道館杯100キロ級決勝で敗れたとはいえ、大いに可能性を感じさせた飯田健太郎講道館杯100キロ級決勝で敗れたとはいえ、大いに可能性を感じさせた飯田健太郎 今年の100キロ級決勝も同じような対戦構図、試合展開だった。

 リオ五輪出場こそ逃したものの、この階級の実力者であるウルフ・アロン(東海大4年)に、インターハイと全日本ジュニアをともに2連覇している国士舘高校3年の飯田健太郎が挑んだ試合。ウルフのパワーと組み手の巧さに、ここまでの4試合をオール一本で勝ち上がってきた飯田も、思い通りの柔道ができない。そのうち、じれた飯田が強引に引き手を取りに前に出た刹那、ウルフが内股を繰り出し、飯田の188センチの巨体が宙を舞う。

 主審の判定は「技あり」。限りなく「一本」に近い技だった。九死に一生を得た飯田は、開き直ったように前に出て、ウルフに向かっていったが、技のポイントは奪えず。そうして5分の試合時間は過ぎ、飯田は国士舘高校の先輩に続く快挙を逃した。

 ジュニア世代の大会で無敵を誇り、「東京オリンピックで金メダルを獲ります」と公言する18歳は、この講道館杯を「勝たなければならない大会」と位置づけていた。

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