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快挙ならずも「アイツは化け物」と呼ばれる
柔道・飯田健太郎のスター性 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Yutaka/AFLO SPORT

「高校生やジュニアの選手が相手だと、自分の思い通りの試合ができるんですけど、シニアの大会となると、ウルフさん以外の選手であっても、なかなか自分の組み手にさせてもらえない。まだまだ差があると実感しました。2位という結果は、満足はできませんけど、(12月に行なわれる)グランドスラムや(来年4月の)選抜体重別につながる。チャンスを無駄にしないように、力をつけていきたい」

 準優勝に終わったとはいえ、飯田に対する柔道界の期待は、12年前の石井以上に大きく、その非凡な才能は誰もが認めるところだ。

 試合中は軸が通ったように背筋を伸ばし、相手の奥襟を掴みにかかって、果敢に攻め込んでいく。講道館杯では決勝までの4試合を、内股、大外刈り、大内刈り、やぐら投げから寝業に持ち込む合わせ技で勝ち上がった。「得意技は内股です」と飯田は言うが、とにかく「一本」を狙える技のバリエーションが豊富で、とりわけ俵を抱えるように相手を放り投げるやぐら投げも大きな武器だ。

 体格や力に頼るのではなく、相手の隙を見逃さずにタイミングよく技を繰り出し、それがことごとく「一本」に結びつく。こういう柔道センスは、単に稽古の量で培っていけるものではない。

「理想の柔道は井上康生さんや、鈴木(桂治)先生。といっても、映像を見て研究することはありません。自分の長所を伸ばしていければいい。自分の強みは、一本を取る柔道だと思っています」

 この日、飯田に敗れたある選手は一言、「アイツは化け物です」というコメントを残した。

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