【女子柔道】中村美里、3度目の五輪へ執念「絶対に金メダルを獲る」 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by YUTAKA/AFLO SPORT

 あれは16歳で脚光を浴びた日の翌日だった。メディアのインタビューを一度も受けたことがないという彼女に話を聞く機会があった。柔道漬けの日々を幼い頃から送り、髪の毛すらも自分で切っていた垢抜けない少女は、柔道の夢はしっかりと、独特のハスキーボイスで口にしていた。

「谷(亮子)さんには勝ちたいとは思わないですけど、オリンピックには出場して、金メダルを獲りたい」

 中村のキャリアにただひとつだけ足りないもの、それが五輪金メダルだ。減量苦により階級を52キロ級に上げて臨んだ08年の北京では準決勝で北朝鮮の安琴愛(アン・グムエ)に力で組手を封じられ、3位決定戦に回って銅メダル。表彰台に立った中村に笑顔はなく、憮然とした表情で立ち尽くしていた姿が印象に残った。12年のロンドンでも同じ安琴愛に惜敗し、今度はメダルすら持ち帰れなかった。

 ロンドン以降はケガとの戦いだった。帰国の直後、左膝前十字じん帯を手術して長期離脱を余儀なくされ、13年の復帰後も完全回復とはいかなかった。

「4年前は、リオのことは考えられなかったし、畳の上にあがっていることすら想像できなかった。ようやく膝も安定してきて、練習も積めているので、今日も勝てたんだと思います」

 男女の代表選手で、2度の五輪を経験しているのは中村だけだ。女子選手の中では前回唯一の金メダリスト・松本薫(57キロ級)に次ぐベテランである。

「経験は若い子よりあるし、少しは大人になっていると思います。代表を引っ張る? そんな意識はないです。リーダーシップはないので......(笑)」

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