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猪木vsアリ、「世紀の一戦」への過激なる前哨戦 (2ページ目)

  • text by Sportiva

 6月16日、ついにアリが来日。羽田空港のゲートから出てくるとファンやマスコミの喧騒に包まれる中、大物悪役プロレスラー、フレッド・ブラッシーとともに「猪木をぶっ壊してやる!」と連呼した。

 その夜、東京・新宿の京王プラザホテルでアリの来日記者会見が行なわれた。
「偉大なボクサーはレスラーや空手......どんな格闘競技の選手にも勝てる。俺はすでに空手の黒帯を取っているんだ。猪木は汚い技を使うので、ブラッシーと対策を研究している」
「日本という国は好きだし、日本人も好きだ。ただ、ひとりだけ嫌いな日本人がいる。猪木だ! 日本女性はとても美しいが、猪木はとても醜(みにく)い。試合後はもっと醜くなるだろう」

 そして、会見の最後にアリは両手を開いて言い放った。
「予言する。8ラウンドで猪木はダウンする」
「猪木は私を尊敬していない。そこが一番嫌いだ。父親が子供をきつく叱るように猪木を倒してやる。ボクシングではいろんな選手を破ってきた。今度はレスラーを破るときだ」

 試合3日前、京王プラザホテルにて調印式ディナーパーティーが開かれた。これまで一方的にアリの挑発にさらされてきた猪木が、ここで反撃に出る。
「みなさんにこれまでの経過をご報告申し上げます。3月25日に調印いたしましたが、それ以降、公の場で非常に侮辱的な罵倒を浴びましたが、私自身ひとこともそれに反論せず、ずっと耐えてまいりました。それから、今回の契約について、またルールについて、すべてアリ側の条件を飲んでまいりました。なぜか? この試合を絶対に実現させたいためで、ずっと耐えに耐えてきたわけです」

 会場から拍手が巻き起こる。そして、猪木はまさかの「奇襲攻撃」を仕掛ける。
「みなさんにご紹介しましょう。アリ側の汚い戦術、裏側で何を言っているのか......ドロップキックは使わないでくれ。あるいは、空手チョップは使わないでくれ。寝てから殴らないでくれ......再三のルール変更にも私はずっと耐えてきたわけです。しかし、それにも限界があります。私は手と足を縛られて闘うのと同じような条件で闘うわけです。アリが本当に偉大なボクサーであるならば、公の場でアリに申し上げたい。すべての興行収益をかけて、勝ったものがそれを獲ろうじゃないか。それだけの覚悟で私はこの試合に臨みます。アリ側もそれを望むならば、その契約書を今ここで交わしてもかまいません」

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