C・フルーム、ツール・ド・フランス制覇。勝敗を分けたものとは?

  • 山口和幸●取材・文 text by Yamaguchi Kazuyuki  photo by AFLO

 世界最高峰の自転車レース「ツール・ド・フランス」は、チーム・スカイに所属するクリス・フルーム(イギリス)が2年ぶり2回目の総合優勝を達成した。首位の選手が着用する黄色いリーダージャージ「マイヨ・ジョーヌ」を、21区間のうち16日にわたって着用しての優勝だったが、レース後半はコロンビアの小柄な山岳スペシャリスト、ナイロ・キンタナ(コロンビア/モビスター・チーム)にタイム差を詰められ、チームのアシスト役に牽引されながら遅れを最小限に抑えて逃げ切った形だ。記録だけを見れば楽勝に思えるが、実際は手に汗を握るような近年まれに見る激闘だった。

チームメイトと肩を組みながらゴールしたクリス・フルーム(中央の黄色ジャージ)チームメイトと肩を組みながらゴールしたクリス・フルーム(中央の黄色ジャージ) イギリス人の両親がケニアの首都ナイロビに住んでいるときに生まれたフルームは、少年期を南アフリカで過ごした。選手としては、南アフリカ登録のコニカ・ミノルタチームでプロデビューし、2007年にはツアー・オブ・ジャパンにも参戦。プロ初勝利は、22回目の誕生日を迎えた日本で手中にした。

 常に笑顔を絶やさない好感の持てる物腰で、ゴール近くのテントの下で行なわれた記者会見では、礼儀正しく質問に答えていたことが印象に残っている。そのときも「暑さには強いんだ」と語っていた。

 その後、フルームはロンドン五輪直前にイギリス籍を取得。理由は、ケニアに五輪出場枠がなかったからだ。

 フルームがツール・ド・フランスで頭角を現したのは、3年前の2012年。同国の先輩で、エースのブラッドリー・ウィギンス(イギリス)のアシスト役を務めたときだ。ウィギンスはこの年、ツールで総合優勝を果たすのだが、エースを献身的にアシストするはずのフルームが上り坂で振り返り、遅れがちなウィギンスに対して「速く来いよ!」とばかりの手振りを見せたのである。インタビューでも立ち話でも、人のよさを見せながらも、実は内面では誰にも負けたくない、そして勝てるレースはすべて勝つという強い意志がある――。それが、フルームの特徴だ。

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