【男子バレー】髙橋藍、アジア選手権で必然のMVPも、ロス五輪に向けては「まだまだ足りない」 (2ページ目)
【頭のなかはずっと冷静だった】
さらに19-19のシーンでは、髙橋は伝家の宝刀と言えるバックアタックを決め、またも逆転に成功、咆哮を上げた。それがスイッチになったかのように、チームは押しきった。彼自身は戦場に立つ兵士のような気迫に満ちていたが、視野は広く、感覚は鋭敏になっていた。むしろ拮抗した場面でアイデアが湧くようだったし、ゾーンに入ってすべての動きがスローに映っていたのかもしれない。フェイクセットを西田有志に合わせたシーンは象徴的だ。
いったい、どんな心理構造なのか。
「気合は入っていますけど、頭のなかはずっと冷静だったので。常にどうやって得点を取るかを考えながら、冷静にできました。自分自身は、今日のフェイクセットはあまりうまくいかなかったんですけど、得点にはつながったことでリズムを作るきっかけになったのは間違いないですね」
髙橋はこともなげに言った。しかし、心を燃やし、頭を冷やしたままにする"矛盾"を成立させられる人間はそういない。たいていはどちらかに引っ張られるし、できたとしても瞬間的だ。
第2セットも、20-20の同点の場面で、髙橋はレシーバーを弾くようなサーブでエースを奪い取っている。これで逆転したが、イランの粘りや味方のミスで23-23と再び同点に。そこで山本智大のレセプションから、髙橋が神々しく羽ばたくようなバックアタックを決め、セットポイントを奪った。最後を締めたのは石川祐希のサービスエースだったが、髙橋が勝負の流れを作っていた。
3セット目も、髙橋は1点目をブロックアウトで奪い取る。そしてリードを奪われるたび、西田有志とともに激しく追撃した。イランにとっては悪夢のような存在だったはずだ。
「"最後の1点"を狙い続けてきました。チャンスが来たら、ブレイクを取るとか。その1点を取るか取らないかで、勝敗は変わる。今日はそれが取れてよかったです」
そう語る髙橋は大会を通じ、「決めきる」と繰り返し、有言実行してみせた。総得点は大会4位の96得点、サービスエースは1位。サーブで崩し、ブロックディフェンス......というチーム戦術を回していた。攻撃だけではなく、ディグの数は4位、レセプションも6位。攻守に八面六臂の活躍で、もはや英雄的だった。
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