【男子バレー】代表セッター永露元稀、アルゼンチンの名将の指南「デコの前」で一段上の選手に (2ページ目)
【「圧倒的に少ない」セッターとしてのキャリア】
額の前でボールを取る。子どもに向けたバレーボール教室でも言われるようなことを、なぜSVリーグというトップの場所でアドバイスされるのか──そう捉える人もいるかもしれない。
だが永露は高校生までアタッカーで、全国優勝も経験。同時期にアンダーカテゴリーでセッターとしてのキャリアがスタートし、東福岡高でセッターの練習を重ねてきた。ただ本人が「圧倒的にキャリアと経験が少ない」と言うように、セッターとして本格的に出場するようになったのは、大学3、4年になってからだ。
試合になれば勝利が求められ、練習でできることができなくなるのも当たり前。潜ればオーバーハンドで上げられるトスでも、ドリブル(ダブルコンタクト)をしたら、とミスを恐れて安易にアンダーハンドで上げてしまう。学生時代に重ねてきたなにげないクセや習慣を、トップカテゴリーで修正しようとしても、全チームにセッター専門のコーチがいるわけではない。
永露が名古屋でリーグ優勝を経験した際、(バルトシュ・)クレク(現東京グレートベアーズ)から「めちゃくちゃ怒られた」と明かしていたように、世界トップの経験とスキルを持つアタッカーと共にプレーすることで影響や刺激、学びを受けてきた。だが、基本の基本に触れることはなかった。
ウェベル監督の指摘は、まさに基本の基本。それはセッターとして永露が求めたものでもあった。
「ハビさんからは常に『デコの前で取れ』と教えてもらっています。その理由も明確で、前で取ったり、後ろで取ったりするとトスがブレるから、安定したトスを上げるためには常にデコの前にボールを持ってこれる位置に入れ、と。試合だけじゃなく、練習の時から毎回毎回言われるので僕も常に意識しているんですけど、パスの状態によってはデコの前に持ってこれなくて、手先で上げようとするとまた『デコの前!』と言われる。でも、それは僕にとってすごくプラス。毎回意識するようになってトスも安定したし。新井やクーパーが上から打てるトスを、上げ続けることができました」
2 / 3

