【男子バレー】台頭する日本代表の次世代、西山大翔と甲斐優斗が世界バレー前哨戦で大暴れ (3ページ目)
【2mのアウトサイドヒッターも成長】
一方、石川祐希、髙橋藍の両輪がいる代表アウトサイドヒッターでは、甲斐優斗(21歳/専修大学4年・大阪ブルテオン)が次世代を担う。
パリ五輪の12人のメンバーのひとりで、身長2mのハイスペックな選手。ネーションズリーグ日本ラウンドでは、長身から振り下ろすサーブでどよめきを巻き起こした。そしてイタリアとの壮行試合でも、飛翔するようなバックアタックを決めるなど存在感を示している。
「ティリ監督も全員にチャンス与えてくれているので、"モノにできるように"と思っていました」
甲斐は柔和な口調で語る。不思議な雰囲気を纏い、長身ゆえの"いかつさ"はない。
「いろいろ試そうと思っていましたが、高いブロックをうまく攻略できなかったです。打ち方のところで、もっとブロックアウトや指先を狙いたいですね」
彼は謙虚に言ったが、あらためてスケール感の大きさは見せつけた。
「チームとしてパイプ攻撃は大事で、自分も積極的に入っていこうと思っているし、いい形で点が取れたのはよかったです。ネーションズリーグに比べると精度は上がってきて、世界バレーに向けて時間はないですが、さらに上げていきたい。相手も真ん中の攻撃あると、サイドのブロックも振れるし、パイプでブロックを引き寄せるとチーム全体もやりやすいと思うので」
彼のバックアタックが切り札になると、日本の攻撃は広がる。強豪イタリアのようなチームを打ち砕き、王座に近づくことができるはずだ。
そこで最後に訊いた。
――パリ五輪、準々決勝でイタリアに敗れて悔しい風景を見たと思いますが、あの時から今日、コートの景色は違って見えましたか?
彼はしっかりと視線を合わせて答えた。
「今までやってきたものは出せたと思いますし、あと一歩届かなかったですけど、またチャレンジできればなと。(イタリアは)世界バレーを勝ち上がったら当たる相手かもしれないので、そこで勝ち切れたらいいなって思っています」
真摯な答えだった。
世界バレー、日本が表彰台に立つには、ラッキーボーイ的な存在が不可欠だろう。西山と甲斐は有力候補だが、2人だけではない。9月13日、開幕のトルコ戦から総力戦だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
【写真】バレーボールネーションズリーグ男子フォトギャラリー
3 / 3