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【SVリーグ男子】レギュラーシーズン1位のブルテオンはなぜ準決勝で敗退したのか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【一石を投じたジェスキー】

 この2試合だけを切り取ると、ファイナル進出にふさわしいのはSTINGSだった。

 ただ、シーズン44試合を通じて1位の成績を収めたのはブルテオンだった。長丁場のリーグで、安定した強さを見せた。ケガや病気、個人の不調、チームの不振と浮き沈みがあるなか、その結果には正当性がある。

 たとえば欧州サッカーなどでは、1年を通じたリーグ戦で結果を出した王者に最大の敬意が表される。プレーオフを行なう場合はリーグ戦を短くし、プレーオフにも相応の時間(試合数)があるべきだという考え方もある。

「こういう負け方はアスリートとして難しい」

 今回の準決勝を最後に退団するトーマス・ジェスキーはセレモニー後、そう言って一石を投じた。

「レギュラーシーズンの試合数は44試合と多く、プレーオフは短い。去年もブルテオンは同じレギュラーシーズン1位。プレーオフは2試合で(王者を逃した)。意味がわからない。欧州ではもっとプレーオフが長く、(日本もそのように)改善すべき。対戦数も(チームによって)4or6試合違い、たとえば自分たちはサントリーよりも強い相手が多かった。日本バレーは組織も世界一だからこそ、この部分もベストなリーグに......」

 結局、ブルテオンは敗退した。しかし、恥じることのない戦いぶりだった。

「Beautiful Game」

 STINGSのゴゴール・ミハウヘッドコーチはそう敬意を表し、奇しくもティリHCも同じ表現を用いた。1点が残酷なまでに明暗を分ける試合に会場は熱狂した。

 最後の無常感すら、バレーボールの魅力だった。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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