髙橋藍がSVリーグ開幕を前に見せた「天才」の片鱗 一昨年の王者相手に、勝負所で光ったサーブ (3ページ目)
【余計な感情はオフにして勝利へ向かう】
パリ五輪、イタリア戦後を取材した当時、誰もが肩を落とし、言葉少なになるなか、髙橋はミックスゾーンで記者たちの質問に丁寧に答えていた。ひと通り答え終わって、さらに最後に筆者がいくつか質問をぶつけても、彼は論理的な答えを返した。
その割り切った懇切な対応は、率直に言って驚きだった。プロとして賞賛に値した。それをあらためて伝えると、髙橋は小さく笑ってこう答えている。
「反省や振り返りは大事ですけど、そこは自分が一番わかっているので。それ以上、考えてもどうしようもない。悔しさを乗り越えるためには"次のオリンピックでそれ以上の結果を出すしかない"って思ったので、悔しさはあっても、頭の中は切り替えられていました」
余計な感情はオフにできる。これぞ、勝者のメンタリティだろう。自他共に認める「負けず嫌い」だが、勝利する予感も含めて楽しんでいる。ウルフドッグス戦も、相手に押された流れになるほど、体中から覇気が滲み出ていた。
「男子バレーは(パリ)オリンピック後、たくさんの方が注目してくれて。人気が上がっている、というのは生活をしているなかでも感じています。今日もたくさんのファンの方がいたので、これからSVリーグをもっと盛り上げられたら」
髙橋は、開幕するSVリーグに向けて決意を語った。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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