髙橋藍がSVリーグ開幕を前に見せた「天才」の片鱗 一昨年の王者相手に、勝負所で光ったサーブ (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【勝負所で流れを引き寄せたサーブ】

 第1セットは、王者サントリーが19-25で奪った。髙橋だけでなく、身長219cmのオポジット、ドミトリー・ムセルスキーは破格。しかし髙橋が新チームに噛み合わないところもあるのか、あるいは一昨年の王者ウルフドッグスが戦いをフィットさせたのか。第2セットは25−18で落とし、第3セットは終盤まで拮抗した展開になった。

 そしてサントリーが20−19とリードされた展開から、髙橋のサーブで立て続けにブレイクした。ここで20-22と逆転したのが、勝負の分岐点だった。

「勝ち方というのは大事で......あの時、ニミル(・アブデルアジズ)選手にエースを取られてしまって、『リズム悪くしたな』っていうポイントがあって。僕のなかで"取り返さないといけない"と思いました」

 髙橋は"スイッチが入る瞬間"を克明に覚えていた。

「自分が取り返せるのは、サーブ、スパイク、ブロックのどれか。そこでサーブが回ってきて、あの時はムセルスキーが前(衛)だったので、ブレイクを取れるチャンスでもある、と考えました。そこはけっこう集中したっていうか、あそこをいかに取っていけるか、でした。もし3セット目を取られていたら、たぶん今日の試合はこういう展開になっていないと思うので。自分の気持ち的には、"ここをしっかり取る"って決めていました」

 その決断と実現力こそ、"勝負の天才"たる所以だろう。第3セット、23-25でサントリーは接戦を制した。そして第4セット、20-25と連取。3−1で勝利を収めたのである。

 たとえタイトルがかかっていない試合でも、髙橋は勝負の匂いを嗅ぎ分けていた。頭の中がいつもクリアになっている。何にも囚われず、やるべきことを判断できるのだ。

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