『ハイキュー!!』の魅力を元日本代表の福澤達哉が熱弁「共感できるキャラクターが必ずひとりはいるはず」 (2ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

【「共感できるキャラクターが必ずひとりはいるはず」】

――福澤さんの目線で、特に「リアルだな」と感じた部分はありますか?

福澤 試合中にある、選手の感情の浮き沈みが丁寧に描かれていると感じます。日向と影山が、お互いに「自分がなんとかしなくちゃいけない」と思いすぎて、気持ちのズレが生まれる、といった場面も「あるある」と思いましたよ。自分のキャパシティー以上のことをやろうとした途端にうまくいかなくなることは、現役時代によく経験しました。

 そういう時は、何かのきっかけで「あ、自分の武器はこれだった」と気づくと、お互いを信頼したプレーができる。『ハイキュー‼』はそこまで描いているのがすごいです。あとは、試合中にリリーフサーバーで入ってくる選手の心情描写も印象的でしたね。

 バレーは流れがあるスポーツですし、大切な1点、チームメイトとの関係、試合相手の実力や調子、どういう位置づけの試合なのか、といった要素でメンタルが揺らぎます。どのスポーツでもそうでしょうが、そのコントロールはすごく重要です。だから選手たちは、お互いを支え合いながらプレーする。影山はかつて孤独だったところから変わっていく様が描かれますが、そこも感情移入しやすいですね。

――強く印象に残っているシーンはありますか?

福澤 烏野高校のミドルブロッカーの月島 蛍が、試合序盤からリードブロックで仕掛け、「ここぞ」というところで白鳥沢学園高校の絶対的エース・牛島若利をシャットアウトするシーンでしょうか。月島のようないやらしいタイプの選手はたくさんいるんです(笑)。

 ただ月島は、なんとなく冷めた部分もあったところからバレーに向き合い、自分の身体能力が高くないことを分かった上で勝負した。他者との比較ではなく、自分の強みや弱みを把握し、自分の強みを最大化した。すべての選手にストーリーがあるので、自分が共感できるキャラクターが必ずひとりはいるはずです。

――月島は音駒高校の黒尾鉄朗からブロックを教わった、いわば"師弟関係"です。福澤さんも高校時代、違う高校の選手に何かを教わることがありましたか?

福澤 私の高校時代は、そういったことはあまりなかったと思います。ただ、合同合宿や練習試合をたくさんやっていると、自然に情報交換をしていることもあるし、うまい選手をマネしてプレーすることはありましたね。ライバルに学ぶことはたくさんありました。

 私の高校世代に春高バレーを制した(2004年)、佐世保南という長崎のチームからも多くを学びました。当時としては珍しく、センター線の攻撃を多用するタイプのチームでした。そこで初めて、「コミットブロック(どこに飛ぶか、あらかじめ決めたブロック)などで真ん中を抑えないと上に行けないんだ」と、翌年のインターハイに向けて練習に取り入れたりした。

 今年の春高は、型がはっきりした駿台学園が制しましたが、他校は「それを打開するためにどう攻めればいいのか」を考える。そこでまた駿台学園がアップデートする、ということを繰り返して切磋琢磨しながらレベルが上がっていく。だから、来年以降の春高も楽しみですね。

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