石川祐希が感じる男子バレー日本代表の進化 でも「達成感はまったくない」のはなぜか (2ページ目)

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by karaya masaki
  • 立松尚積●撮影 photo by Tatematsu Naozumi

【負けた後にどんな試合をするか】

――勝敗は別にして、印象に残っている試合はありますか。

「準々決勝のスロベニア戦と、3位決定戦のイタリア戦です。そのふたつは重視していた試合でした。スロベニア戦に関しては『ベスト4に入る』という目標を達成するために大事な試合だったので、このネーションズリーグで1番大事だと思っていました。その試合で、個人的にはしっかりとパフォーマンスを発揮できたと思います。27点も取っていましたが、自分でもそんなに点を取っていると思っていなくて、びっくりしました」

 3位決定戦は、準決勝でポーランドに負けはしましたが、ベスト4という目標は達成しているということが頭の片隅にありました。それは、昨季のイタリア1部リーグと同じ感覚だったんです。リーグでもプレーオフの準決勝に進むことを目標にしていて、準々決勝でペルージャを倒して目標を達成。でも、そこでシーズンは終わりじゃない。その後、準決勝でチビタノーバに負けて、力尽きちゃったかのように3位決定戦のピアチェンツァ戦ではまったくパフォーマンスを上げられませんでした。

 ネーションズリーグもそれと同じ状況になりましたね。目標は達成しているけど、そこで終わるのか。それともイタリアでの反省を生かして、もう1回踏ん張ってメダルを取るのか。自分の中で、『またひとつ成長するチャンスがここにある』と思いながらプレーしていました。それで結果を残せたのは、非常に大きかったです」

――同じ失敗は繰り返さない、と。

「そんな感じです。イタリアでの経験は仕方がないことだと感じていて、失敗ではないと思っています。ただ、同じことを繰り返して同じ結果を出すのか、もうひとつ上に進むのかというのは明確な違いでしたね」

――チームとしては、3位決定戦にはどのような意識で臨んでいたのでしょうか。

「メダルが懸かった大事な試合でしたが、チームとしてはメダルを取りにいくというよりも、負けた後にどんな試合をするか、ということを考えていました。みんな疲れていましたし、イタリアは強いので普通にやったら負けてしまう。そこで自分たちがどういうパフォーマンスをするのかということ、目の前の1点や1球を必死に取りに行くこと。それがパリ五輪予選(OQT)につながると(フィリップ・)ブラン監督からも言われていました。

 試合前にチーム全体でそういう話をしてゲームに入ったので、その点はしっかりと実現できたと思います。例えば、OQTでは初戦のフィンランドに負ける可能性もあるわけです。そうなったら、もう1試合も負けられない。メンタルもきつい状態でずっと戦わないといけません。そういうところもイメージしながらやっていました」

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