【追悼・男子バレー藤井直伸さん】日本代表で光ったクイック、妻・美弥さんも大好きな「強くて優しい笑顔」を忘れない (2ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

 五輪後の2021年9月には、女子日本代表で活躍したセッターの佐藤美弥さんとの結婚を発表。佐藤さんはスポルティーバのインタビューで、オリンピック前の4月1日に「サプライズでプロポーズがあった」ことを明かした。

 五輪後のシーズン途中のJTサンダーズ戦で、藤井さんは視力の不調を感じ途中退場した。精密検査の結果、胃と脳にも転移したガンが目に影響していたことが判明。年明けの2022年2月に自身のインスタグラムで次のように報告した。

「最初に診断された時は驚き、不安、怖さ、色々な感情がありましたが、家族・チームメイトの温かい支えにより、もう前を向いてこの病気に打ち勝つという強い意志を持っています!!」

 その後も本人の強い意思により、同シーズンから務めていた東レの主将を続投。インスタグラムでは、お見舞いにきた選手との写真やチームへの励ましなどを投稿していたが、2023年3月12日、同10日に亡くなっていたことが、所属チームから公表された。

 訃報から初めての試合となったJTサンダーズ戦では、試合前の練習で東レのスタッフ・選手全員が藤井さんの背番号である21番のシャツを着用。また、事前にSNSでファンに募集した藤井さんの写真をまとめた動画が流れ、追悼のコーナーも設けられた。

東レや日本代表でも輝きを放った、藤井さん(右)と李選手のクイック 坂本清/写真photo by Sakamoto Kiyoshi東レや日本代表でも輝きを放った、藤井さん(右)と李選手のクイック 坂本清/写真photo by Sakamoto Kiyoshiこの記事に関連する写真を見る 試合は敗れたが、今シーズンは体調を崩して長期離脱していた李が途中出場し、シーズン初の速攻を決めた。試合後に李は「藤井には感謝の気持ちが多過ぎて。(それを伝えるための)『ありがとう』以上の言葉がほしい」と涙を浮かべた。

 ブロックポイントを6点も挙げた髙橋健太郎は「藤井さんが降りてきた」とコメント。さらに、最多得点をあげた富田将馬は、「藤井さんにレシーブは『そこにいろ』とか、スパイクは『ここに打て』と言われているようだった。主将としてコート内で盛り上げる姿をずっと見てきた。今後、自分がコートキャプテンとして藤井さんに近づければ"恩返し"になると思う」と振り返った。

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