西田有志が「いつもと違う」と感じた東京五輪。強豪国との差を埋めるための課題も力説 (2ページ目)
第2セットの途中でサービスエースを決めてからは通常の西田のプレーに戻っていったように見えたが、「調子が上がってきたという感覚もなかったですね。期間が短い五輪は、予選ラウンドもある意味"一発勝負"なので、その場その場で全力を尽くすしかない。自分のプレーを振り返るのは試合後だけでした」と語る。
スタートの動きの硬さは、5月の紅白戦で負ったけケガも影響していたかもしれない。試合中に右足首を捻挫した瞬間、西田は何を思ったのか。
「瞬時に、『早く治るようなケガではないな』と思いました。だけど、そんなに焦りはなかったですし、どれだけ早く状態を上げられるかだけでしたね。それで五輪までに間に合わなかったら、そういう運命なんだろうと」
西田の受難はそこでは終わらず、五輪直前に行なわれたネーションズリーグでも右の太ももを痛めた。さすがにそこでは「五輪に間に合わないかもしれない」という思いが頭をよぎったようだが、「なるべく考えないようにしていました」という。
そんな大会前の不安や初戦の出だしの悪さをかき消すように、2戦目のカナダ戦はチームトップの23得点を記録。4戦を終えて2勝2敗になり、決勝トーナメント進出をかけた予選最後のイラン戦でも30得点を決めてチームを牽引した。
その"アジアの雄"を決する試合は、どちらも譲らずにフルセットにもつれ込んだ。第5セットでマッチポイントを握ったのは日本だったが、14-13とリードはわずか1点。そんな手に汗握る最後にトスを託された西田は、バックライトからのスパイクを相手コートに突き刺し、決勝トーナメントへの扉を開いた。
「最後は『自分に来るだろうな』とは思っていましたが、トスを呼んだわけではないです。試合が終わったあとには、セッターの関田(誠大)さんと『もっと僕に(トスを)上げてくれてもよかったんですよ』と、冗談交じりに話すこともありましたけどね。どこに上げるかは司令塔であるセッターが決めることですし、僕は信じて助走に入るだけ。イラン戦の最後も、そこにトスが上がってきただけのことです。
決勝トーナメント進出にかける思いの強さは、僕たちもイランも一緒だった。勝てば次があり、負ければ終わるという状況だったので、セット率や『アジアのライバル』だからということも一切関係なく、勝利だけを考えていました。ともに必死だったから、ああいう好ゲームになったんだと思います」
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