不妊治療、心臓手術、怒らない大会...美女バレーボーラー益子直美の引退後 (4ページ目)

  • 中西美雁●取材・文 text by Nakanishi Mikari

――大会を開催する際に苦労したことなどはありますか?

「苦労ではないのですが、いろんなことを勉強しましたね。大会を始めたばかりの時、参加チームの監督のひとりから『怒らないなら、どんな声かけをしたらいいの?』と聞かれたことがあり、具体的なことを答えることができなかったんです。(前編で話したように)私も子どもの時から厳しい指導を受け、怒られすぎて自信を失っていた経験があったからかもしれません。

 そこから、スポーツメンタルコーチング、アンガーマネジメント、ペップトーク(短い激励のスピーチ)といったことを勉強しました。ちゃんと子どもたちのやることを受け止め、褒めながら意欲や能力を伸ばしていく。そういうところを学ぶきっかけになりました」

――そういった大会を続けながらだと思いますが、さらに先のキャリアについてどう考えていますか?

「これから60歳に向かっていく上でのビジョンは描けていますよ。まずは大学に入って勉強がしたいです。女子大生になるのもいいですよね(笑)。新型コロナウィルスの影響もあって難しいかなと諦めかけていましたが、オンラインで学べるなら挑戦してみようと思っています」

――描いているビジョンとは、具体的にどんなものですか?

「恥ずかしいので少しだけ言うと、『怒る人を、きちんと怒る人』みたいな感じでしょうか。子どもたちのスポーツ環境を少しでもよくするための活動をしていきたいです。先ほども言ったように、指導者の方たちに『怒ってはいけない』と言うだけではいけないとも思っています。

 怒りがどこから来るのかということを学んでいくうちに、ボキャブラリーが少ない人が、言葉ではなく感情で人に当たってしまうことがわかってきました。6年間行なってきた大会や、別の機会があった時に、こちらから提案する指導方法を納得してもらえるだけのものを、私が持っていないといけない。

 同じようなことを考えているのは私だけではないですし、そういった人たちとも協力しながら徐々に浸透させていきたいですね。子どもたち、LGBTの方たち、すべての人にとってスポーツをする環境をよくするために頑張っていきたいです。あ、もちろん無理をせず、ということも忘れずに」

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