男子バレー惨敗問題。石川祐希の起用法で混乱。優先すべきは今か未来か (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • photo by AP/AFLO

「びっくりしましたけど、自分が言われた役目をやりきるだけ」と語った石川は6打数6得点を挙げるも、第3セットで6点差をひっくり返されるなどセットカウント3-2で勝ったものの得失セット数による勝ち点で劣り、日本の1次ラウンド敗退が決まった。

 中垣内監督はベルギー戦後、石川に「雰囲気がよくない」と声をかけたという。そして、「ネーションズリーグでのいい雰囲気に戻そうとした」と、アルゼンチン戦でのスタメン変更の意図を語った。

 調子が上がらずとも石川を起用したかったブランコーチ、石川を軸にしたいが世界選手権で手堅く勝利を求めた中垣内監督の"落とし所"が「石川2枚替えのオポジット」だったのだろう。東京五輪を見据えて戦うか、手堅く勝ちに行くかという選択は難しいが、今大会は土壇場までそこが定まらなかった印象がある。

 中垣内監督は、「やろうとしたコンセプトは正しかったと思う。今後もそれは続ける」と明言した。確かに、批判の多かった福澤の多用も、ブロックの貢献の少ない山内の起用も、「真ん中からの攻撃」を最優先にしたという点から見ればわかりやすい。

 真ん中からの攻撃を使うため、サーブレシーブがある程度安定していて、サイドの中ではブロック力の高い福澤が途中から使い続けられたのだろう。山内は、関田でも藤井でも安定してクイックで得点ができる。今の日本にはパラメーターが正六角形になるような選手はいない。何かを選べば、何かに目をつぶることになるのだ。

 真ん中からの早い攻撃を多用し、サイドの軸を石川に。サーブやブロックの強化も急務だが、石川は大会後、世界選手権をこう振り返った。

「開幕戦のような特別の試合も含めて、大きな舞台で戦うことができて嬉しいし楽しかったが、結果が残せず悔しい。柳田さんと比べて自分がまだまだだと思うところは、セッターを選ばず打ちこなせないところ。それは今から修正します。切り替えて、所属チームのシエナ(セリエA)でステップアップしたいです」

 東京五輪まであと2年。世界との差をいかに縮められるか。

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