9月に急逝した仲間のために。パナソニックが天皇杯優勝に込めた想い (3ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari
  • 堀江丈●撮影 photo by Horie Joe

 天皇杯、リーグ、黒鷲旗の3冠のうち、まずは1冠を手にしたパナソニック。1月6日に再開されるリーグでも首位を独走しているが、油断は禁物だ。14ポイント差でリーグ2位につける豊田合成は、天皇杯でも大活躍したイゴール・オムルチェンを前半戦の途中からケガで欠いていたという事情がある。また、3位の東レアローズにも天皇杯準決勝ではフルセットまで持ち込まれており、リーグ再開後の戦いは熾烈を極めそうだ。

 前任の南部正司監督時代のパナソニックは、2回の3冠や4回のリーグ優勝を達成した"常勝軍団"だった。清水は「監督が代わったから弱くなった、とは言われたくない」と強い決意を語っていたが、昨季は多くのケガに泣かされるなど、思うようにチームをけん引できずにいた。

 天皇杯の序盤には、「僕たちはもう何年も優勝から遠ざかっているので、チャレンジャーのつもりで一戦一戦を戦っています」と険しい表情でコメントしていた清水。久しぶりの栄冠に喜びを噛み締めつつも、リーグ再開に向けて気持ちを引き締めていた。

「ずっと優勝できていなかったからか、今日の決勝もリードしているのに『また負けてしまうんじゃないか』という考えが頭をよぎった瞬間もありました。でも、ベンチの孝さんのユニが自分を奮い立たせてくれました。

 全日本ではリオオリンピック出場を逃して、引退を考えたこともありましたが、今は東京オリンピックで勝つことを目指しています。そのためには、天皇杯だけでなくリーグでも活躍して全日本に選ばれないといけません。今日1日だけは思い切り喜んで、明日からはまたリーグ制覇のための日々に戻ります」

 谷村さんにさらなるタイトルを届けるために──。

 一丸となったパナソニックが2冠目のリーグ制覇へ突き進む。

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