【男子バレー】JT創部84年目の初V。チームを変えた3人の男たち (2ページ目)
「第1セットがカギだった」と、サントリーのジルソン・ベルナルド監督も、ヴコヴィッチ監督も、ヴィソットも、越川も断言した。
「第1セットを取り切れた要因は?」と越川にたずねると、「あきらめないという言葉に尽きる」と答えが返ってきた。どんな状況に追い込まれてもあきらめない。日本人トップクラスのサーブよりも、キレのあるスパイクよりも、これが越川の持つ最大の武器なのだ。
サントリーも決して無策だったわけではない。リーグ中盤はミドルをラリー中でもよく使っていたのが、決勝リーグ"ファイナル6"に入ってからは、オポジットのエバンドロ・グエッラにボールを集める戦術に変わってきていた。だが、決勝では一転して、山村宏太・鈴木寛史の両ミドルを積極的に使い、「想定していたブロック戦術があてはまらず、最初はかなりとまどいました」(JTミドルブロッカーの町野仁志)とJTを攪乱(かくらん)した。
しかし、JTの司令塔、深津旭弘もトスをまんべんなく散らし、総打数82本のうちヴィソットが26本、越川が23本、越川の対角レフトの小澤翔が16本、両ミドルあわせて17本と相手ブロックになかなか的を絞らせなかった。
両チームで最も差がついたのはサーブ。JTはサーブで11得点し、効果率(※2)も16%。対するサントリーはわずか1得点、効果率も7.1%と、明暗を分ける最大要因となった。6得点のヴィソット、4得点の越川はパワーサーブだが、他のメンバーはフローターで主にサントリーのリベロを狙い、着実に入れつつもレセプション(サーブレシーブ)を乱すことに成功し、サントリーは第3セット、ついにリベロを交代させた(サーブ専門・ディグ専門でワンプレイごとに交代する以外は、故障などのアクシデントでなくリベロを交代することはほとんどない)。
※2 サービスエースと相手レセプションを乱したサーブを合計して算出する
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