【女子バレー】新戦術MB1を採用した眞鍋監督、本当の狙い (2ページ目)

  • 中西美雁●文 text by Nakanishi MIkari
  • 坂本清●写真 photo by Sakamoto Kiyoshi

 ロシアのキャプテン・パンコワはMB1について聞かれ、「MB1? そんなわけないわ。だってMBはちゃんと2人いたもの。真ん中に入る選手が2人いたじゃない。そうでしょう?」となかばキレ気味に答えた。迫田の「前衛の選手による、バックアタックのようなアタック」には、ロシアチームも審判も最初はバックアタックだと判断してしまい、一度は「アタックラインの踏み越し」のファウル(バックアタックを打つ場合、コートの真ん中にあるアタックラインより後ろから打たなければならない)を取られ、日本チームの説明後にノーカウントになる一幕も。この日から読売・朝日・毎日など大手新聞社をはじめとして、各メディアの見出しに連日「新戦術」「MB1」が踊ることになる。

 だが2戦目、組織的なブロックシステムをとるアメリカにはきっちりブロックにつかれ、迫田のアタックは封じられた。途中でベンチに下がったとはいえわずか3得点のみ。今年からアメリカ代表の指揮を執る、「ミスター・バレーボール」ことカーチキライ監督によれば、「先週東京で日本チームとはたくさん練習をしたので、新戦術についてはよく知っていたし、準備もした」とのこと。そこで日本はベンチを温めていたMBの岩坂名奈や、MBの対角に入るもう1人のサイドアタッカー長岡望悠を投入。岩坂がブロックで4得点するなど気を吐き1セットを取り返すが、1-3で敗れてしまう。

 MB1を続けるのか。それとも従来のMB2人体制に戻すのか。注目の第3戦、タイ戦のMBは、それまでの大竹里歩ではなく、岩坂のやはり1人。翌日のメダルがかかったドミニカ戦、金メダルがかかった最終戦ブラジル戦も同じスタメンだった。

 結果的には3大会ぶりの銅メダルを獲得したわけだが、ランキング1位ブラジルと2位アメリカにはこの戦術は通用しなかった。アメリカ戦での迫田の得点は前述の通り3得点、ブラジル戦でも6得点。他の3戦では10点以上をマークしていただけに、くっきりと明暗が分かれた。ちなみに大会を通してのアタック決定率はトップで、迫田はベストアウトサイドスパイカー賞を受賞している。

 MBの対角に入った迫田や長岡をはじめとして、選手達は口々に「新戦術を初めて聞いたときはわくわくしましたし、実際に試せるのがすごく楽しみでした。手応えも感じています」と言っていたが、もちろんそうはならなかった選手もいた。ポジションを一つ減らされた形になったミドルブロッカーの選手達である。

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