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錦織圭の「ロウソクの火」は20歳・坂本怜に受け継がれていく「ほかの選手に負けるよりよかった」 (3ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Akatsuki Uchida

【20歳の勢いを止める力は......】

 純然たる挑戦者として向かった決戦のコート。同時に、試合前にふたりで並んだフォトシューティングでは、満面の笑みが広がった。

「もう楽しみで。『こんなこと起こっていいんかな? しかもUSオープンで』という喜びが出ちゃいましたね」

 写真撮影を終えたあと、ふたりはネットを挟み対峙する。錦織の背を追い続けてきた坂本が、真の意味で正面から向き合った瞬間だった。

 始まった、運命の一戦──。

「最初のゲームは、バチバチに緊張していた」という坂本は、ラブゲームでブレークを許す。だが続くゲームで、即ブレークバックに成功した。

「自分の2度目のサービスゲームあたりから、ちゃんとサーブを打てればキープできるなと感じた。そこから緊張が少しずつほぐれていった」

 周囲の喧騒や雑念から離れ、目の前の試合に絞り込まれていく坂本の集中力が、見る者にも伝わるようだった。

 他方で錦織は、ゲームが進むにつれ、坂本の成長を肌身で感じていたという。

「あれだけいい球、いい攻撃的なプレーは、2、3年前はまだなかった」

 IMGアカデミーに来たばかりの坂本の姿も、ふと思い出しただろうか。

「サーブにしろ、これだけ攻撃的にプレーをしてくれているのはうれしい」

 錦織はそうも言った。

 同時に自分のプレーには、もどかしさも感じていたようだ。ボールへの入りが遅れ、「あし!」と叫び、自らの足を叩く場面もあった。

 第1セットを失った錦織は、第2セットも苦しい戦いが続く。センターに、そしてワイドに打ちこまれる時速139マイル(約224キロ)のサーブに、反応できない場面も多々あった。

 それでも、これぞ錦織という妙技の数々も披露する。ドロップショットで相手をネット際に誘い、195cmの坂本が飛び上がっても届かぬ絶妙なロブを決めた時には、満員の観客が沸きに沸いた。

 第2セットだけでも4本あった坂本のブレークチャンスをしのぎ、持ち込んだタイブレーク。だが、闘争心さえ冷静に制御する20歳の勢いを、止める力は残っていなかった。

 最後に時速137マイルのエースを叩き込み、大の字に倒れた勝者を、錦織は「あー、寝てるわ」と思いながら見ていたという。

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