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35歳の錦織圭が今、スライスを使いたがっている理由「若い選手と打ち合い続けても、たぶん勝てない」 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【錦織が気になっている18歳の新鋭】

 錦織の「あおいちゃんを目指して」には幾分のリップサービスもあるだろうが、同時に、いかに今の錦織がスライスを重視しているかも映す。その狙いはやはり、次の言葉にあるだろう。

「やっぱり、若い選手たちと打ち合い続けても、たぶん勝てないんで。ここで何か違うショット混ぜないといけないっていうのは、最近、特に感じます」

 その錦織の新たな戦術を試すうえでも、格好の相手が準決勝の舞台で待ち受けていた。彼の名はジョアン・フォンセカ(ブラジル)。今年2月のアルゼンチン・オープンでATPツアー初優勝を手にしたばかりの、今テニス界で最も眩い光を放つ18歳である。

 錦織自身も17年前に、18歳でセンセーショナルなツアー初優勝を成し遂げた。そんな縁もあってか、錦織はフォンセカの存在を「めちゃめちゃ気になっています」と言った。とりわけ錦織も目を見張るのが、フォアハンド。

「やっぱり、球の速さは光っていますよね。アルカラスみたいな感じで、フォアの強さが光っているいい選手だなと思います」と、最大級の評価を与えた。

 果たしてアリゾナで実現した「新旧・衝撃の18歳対決」は、結果から言うならフォンセカが6-3、6-3で勝利。

 18歳のバウンド後も低く伸びる強打を、錦織は跳ね際を叩いて渡り合った。ただ、ラリーを続けてもフォンセカのショットの精度は落ちるどころか、むしろより深く、鋭く刺さる。

 なにより、フォンセカのピンポイントで打ち込まれる高速サーブからの展開を、錦織はなかなか攻略できない。自身はブレークできず、相手には3つのブレークを許した。

 錦織のコーチのトーマス・ヨハンソンは「試合前には、もっとスライスを使っていこうと話していた」と明かす。「ただ、あそこまで速いショットを深く打ち込まれると、それも難しい。フォンセカはすばらしいプレーをした」とも厳しい顔で続けた。

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