錦織圭は日本代表で葛藤していた「自分が出ていいのか」...でも、満員の有明コロシアムで幸せを味わいたかった (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【コロンビアのエース相手に圧勝】

 その光景に包まれたことへの高揚感が、試合立ち上がりで、錦織の動きをやや硬くしただろうか。

「久しぶりの日本の試合ですし、あれだけお客さんも入っていましたし、デ杯ということもあり、緊張感は正直ありました」

 試合後に、彼は照れ臭そうに明かした。

 コロンビアのエース、ニコラス・メヒアとは今回が初対戦。ただ、錦織が拠点とするフロリダのIMGアカデミーで、かつてよく練習をした仲だという。

 だからこそ、「セカンドサーブは攻めていけるスピード」との情報を頭に入れ、高い位置で相手のサーブを叩き、「なるべく前に出て攻める」プランを思い描いた。

 はたして狙いどおり、第1セットの3ゲーム目で、早々に相手サーブをブレーク。第2セットに入ると、錦織の動きやショットは一層、躍動感と多彩さを増していった。

 リターンからネットに詰めて、ボレーを決める。鋭いスピンを掛けて相手を追い出し、相手の必死の返球を早いタイミングで捕えて、より鋭角へと打ち込む──。

 錦織が軽やかに飛び跳ね、右腕を鋭く振り抜くたび、「すごい!」「うまいね」の感嘆の声が客席から漏れた。第2セットも第5ゲームをブレークすると、日本の勝利を願うファンの声を背に受けて、錦織はゴールまで駆け抜けた。

 スコアは6-4、6-4。相手に許したブレークはゼロ。

 ただ、オンコートインタビューでの錦織の第一声は、「まーまーでしたね」だった。会見でも、「理想はもうちょっとリターンを入れて、ミス減らして攻めていって......」と、反省の弁が口をつく。

 完勝に見える試合にも、どこか納得のいかない表情。その要因は、高まる「自分への期待」にあったようだ。

「オリンピックまではボールの感覚もよくなくて、攻め方がわからないところもあったんです。でも(8月上旬の)モントリオール大会でバチバチっときて、ステファノス・チチパス(ギリシャ)に勝ったところからですかね。あの辺からだいぶ感覚がよくなって、攻める自信も出てきて」

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