錦織圭が日本代表に帰ってきた理由「ゼロから再び世界の頂点を目指す」姿を後輩に見せる (3ページ目)
【あと数年で消えてしまうけど...】
それら後輩たちの横で肩をすくめ、文字どおり顔を赤らめながら、賛辞をなんとも気恥ずかしそうに錦織は聞いていた。
錦織自身、後進たちを導いていきたいとの自覚があるかと問われれば、「いや、そうではないんですが......」と、やや困惑ぎみの笑みをこぼす。
ただ、下の世代への想いは、年齢を重ねるごとに強まっていることは間違いないようだ。
「楽しみです。早く(上に)来てほしいなっていう......行ける実力があるから、早く上がってきてほしいなっていうところは、常にあります」
そう綿貫と望月にエールを送ると、「それを言うと、よっしー......西岡(良仁)選手に関しても、もっともっといけると思うんですよ」と、現日本テニス界のエースにもハッパをかけた。
「僕は、あと数年で消えてしまいますけど......」と冗談めかして口にしながら、こうも続ける。
「西岡くんや(ダニエル)太郎くんがちょっと上がってくることによって、若手もどんどん上がってこられる。そこの期待は、すごくしています」
長く世界のトップで"テニス界の顔"を張った錦織に「行ける実力がある」と押される太鼓判が、いかに若手にとって自分を信じる根拠となることか──。その効力は計り知れず、そして錦織本人も、無意識的だとしても自身の影響力を知るのだろう。
15カ月前、錦織の世界ランキングは消失し、彼の名はリストから消えた。文字どおり、ゼロから再び世界の頂点を目指し歩む──。その背を後進たちに見せるべく、錦織圭は日本代表に帰ってきた。
著者プロフィール
内田 暁 (うちだ・あかつき)
編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。2008年頃からテニスを追いはじめ、年の半分ほどは海外取材。著書に『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)、『勝てる脳、負ける脳』(集英社)など。
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