錦織圭が日本代表に帰ってきた理由「ゼロから再び世界の頂点を目指す」姿を後輩に見せる (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【34歳の錦織が一番無邪気に笑う】

 錦織はその後、全米オープンには出場せず、イタリア開催のATPチャレンジャー(ツアー下部大会郡)2大会に出場。これは、公傷により欠場した選手への救済措置である「プロテクトランキング」のルール上の都合だ。錦織のプロテクトランキングは9月末まで延長となり、9月25日開幕のジャパンオープンにはこれを用いての出場を予定している。

 ただ、全米オープンには昨年もプロテクトランキングを用いてエントリーしたため、『同じ大会に二度は出られない』という規定のため、出場は認められなかったという。なお、昨年の全米オープンでの錦織は、直前に棄権し、結果的に出場はならなかった。

 今シーズンのここから先、錦織は9月18日開幕の成都(ATP250)、前述のジャパンオープンに続き、10月2日開幕の上海(ATP1000)、そして10月21日からのウィーン(ATP500)と大会が続く。ジャパンオープン以外は、すべて主催者推薦枠を得ての出場だ。

 明確に掲げる目標は、「年内のトップ100入り」。100位以内に入ればグランドスラム本戦からの出場が可能となり、先への視界が一気に開ける。

 そのラストスパートの前に出場するのが、今回のデビスカップだ。

 ただしデビスカップには、ランキングポイントは付与されない。言ってみれば、純粋に日本テニス界のため、日の丸を背負いコートに立つことを、彼は選んだ。
 
 もっとも、このような物言いをするといささか悲壮な色をはらむが、開幕前日のドローミーティングで雛段(ひなだん)の椅子に座る錦織に、張り詰めた雰囲気はまるでなかった。34歳の錦織は、選出された5人のなかで最年長。それでも彼は、5人のなかで一番無邪気な笑みを浮かべ、今大会でダブルスを組む綿貫陽介と楽しそうに言葉を交わしていた。

 その綿貫や若手の望月慎太郎に、会見では「錦織選手から受けた影響」への問いが向けられた。

「僕はIMGアカデミーで何度か練習させていただいたり、話す機会をもらったり。本当に小さい頃から、お手本のような存在」

 望月が朴訥な口調でそう言えば、綿貫は「ジュニア時代に初めて(デニスカップで)チームのサポートメンバーとして入らせてもらった時、錦織さんの背中が大きく見えて......。試合に入る時の姿だったり、アップしている時もかっこよさがすごくあって、憧れていた」と、羨望の想いを明るくつづる。

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