錦織圭が「ちょっと怖気づいた」ウインブルドン復帰戦 勝利を目の前に「打てなくなっちゃった」理由 (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【明るい材料は肩の痛みも癒えたこと】

 試合後の錦織は、淡々と紡ぐ言葉の端々に、落胆の色をにじませる。

「今日は、いい時と悪い時の差が大きかったですね。僕のエラーが本当に無駄な時にけっこう出てしまって。それが一番の負けた原因だった。4セットとかで勝てたかもしれなかったし、攻めている時はよかったけど、彼に先に攻められる時間が多くなったし、特に第5セットはラリー戦でも勝てなくなってきていた」

 試合を振り返る彼は、「ちょっと、怖気(おじけ)づいたところもあり......という何か終わり方でした」の言葉で絞めた。

「怖気づいた」というのは、プレーそのものよりも、心持ちの影響だろう。その要因として彼は、「唯一、言うとすると......」と前置きして、続けた。

「(自分への)期待がほぼなかったので、出だしはそれが逆によくて。打ったら入ることに自分でもびっくりするくらいの感覚はあったんです。でも、先にリードした時に、勝ちが見えたんですかね」

 第1セットを取った時、あるいは第3セットで競り勝った時に、頭に響く「勝てる」の声。錦織ほどの実績と経験を持つ選手ですら、その期待感に「打てなくなっちゃった」というのだ。

 そのような心の壁を打ち破る唯一の方法は、やはり「勝利」だと錦織は言う。

「試合でまだそんなに勝てていないので。試合に勝っていけたら......」

 彼はここで、言葉を止めた。果たしてその先に続くのは、どのような思いだったろうか。

 明るい材料としては、肩の痛みも癒え「サーブがしっかり打てたこと」を上げた。

 以前は出場大会を絞っていく方針も口にしていた錦織だが、いざ試合に出ると、勝利にまさる復活への足がかりはないと知る。だからこそ今後は、「体調と相談して、たくさん試合ができればいいかな」と言った。

 英国の記者に「度重なるケガのモチベーションへの影響」を問われた時、錦織は「幸いにも、まだテニスを楽しめている」と応じた。

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