錦織圭が「ちょっと怖気づいた」ウインブルドン復帰戦 勝利を目の前に「打てなくなっちゃった」理由 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【日没によって好機へ転じると思いきや...】

 錦織の今大会の出場に関しては、直前まで疑問符がついた。開幕1週間前に古傷でもある右足を捻挫し、ぎりぎりまで態度を保留していたからだ。

 その出場決断に至った経緯を問われても、「どうという特に理由はないですけど......目の前に試合があるので、出るだけで」と、過剰な感傷を込めることはない。あくまで復活のプロセスの一環、といういい意味での割りきりが、錦織の表情や言葉からにじみ出ていた。

 7月2日に錦織の試合が始まった時、周囲はすでに薄暗く、日没前に終えるのは難しい時間帯だった。試合全体の設計図を書くよりも、目の前のボールに集中すべき状況。それが錦織にはプラスに働いただろうか。ケガの不安を感じさせない、すばらしい立ち上がりを見せた。

 相手のアルトゥール・リンデルネック(フランス)は、28歳の長身ビッグサーバー。ただ、錦織のリターン力をもってすれば、さほど攻略は困難ではない。

 鋭く返すリターンが、そして跳ね際をクリーンにとらえストレートに叩き込むフォアが、次々に真新しい芝に鋭く刺さり低く跳ねる。ブレークを許しながらもリターンで圧倒的な優位性を誇る錦織が、第1セットを7-5で先取した。

 ただ第2セットに入ると、相手も徐々にストロークで打ち勝つ場面が増えていく。対する錦織は、第1セットほど思うようにボールを操れない。第2セットはリンデルネックの手に渡り、第3セットが始まりほどなくした時点で、日没により試合は中断に。錦織にしてみれば、仕切り直しの好機のように見えた。

 翌日の再開後は、錦織が再び優勢に立つ。序盤のブレークの危機を切り抜けると、タイブレークでは錦織の低い軌道のフォアハンドが次々相手コートに刺さった。第3セットは、錦織の手に。セカンドサーブのポイント獲得率100パーセント(9本中9本)という数字が、ストローク戦における錦織の優位性を物語った。

 だが第4セットに入ると、錦織のミスが目立ち始める。このセットを失いファイナルセットに入っても、ショットの精度はなかなか上がらない。対して相手は、プレーに自信がみなぎりボールに勢いが増す。最後は、センターに叩き込まれたサーブが試合にピリオドを打つ。薄暮のなか、二日に及ぶ錦織のウインブルドン復帰戦は、7-5,4-6,7-6,3-6,2-6で終幕した。

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