錦織圭が5度目の五輪へ 初出場から16年...次代を担う後進は育っているのか (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【トップ100入りする若手が減少】

 そして、2024年----。

 ケガで長期離脱を強いられた錦織のランキングは286位だが、『公傷』による48位のプロテクトランキングを活用して、今回の出場資格獲得となった。現在の日本最高位は、ダニエルの84位。長くトップ100を維持した西岡は、現在104位につけている。

 出場権を得られるのは、6月10日づけ単ランキングを基準とした56名。ただ、実際の当落ラインは、各国最大4名の出場枠や国別対抗戦出場ノルマ、さらには本人の意向等の複合的要因で決まるため、80位前後まで下がるのが慣例だ。実際の出場者は最終発表までわからないが、錦織のみの可能性も少なくない。

 一時はトップ100に日本男子テニスは4選手がいた。だが、現在28歳の西岡より年下の選手でトップ100入りを果たしたのは、綿貫陽介のみである。

 その現状に危機感を覚え、2年前にデビスカップ(国別対抗戦)日本代表監督に名乗り出たのが、添田だ。現役引退と同時に監督に就任した添田は、彼を駆り立てた現役当時の使命感を、次のように口にしていた。

「僕が100位に入った時は、(錦織)圭がトップを走ってくれたなかで、僕らもそこに追いつきたいという思いが間違いなくあった。そこが一番大きかったと思います。

 ただ、圭はちょっと特別というか、あんなに簡単に100位に入れることは滅多にないとも思っていた。だから僕は、3〜5年かけてトップ100に入る計画を立てていました。そこから(伊藤)竜馬や杉田(祐一)も続いたので、すごくいい流れだったと思うんです」

 その「いい流れ」が途絶えた理由についても、添田が語る考察は鋭利だ。

「今は100位に対するハードルが、悪い意味で下がっている気がします。普通にツアーを回っていれば入れるという、変な慢心にも似た空気になっているかもしれない」

 錦織効果により『純国産組』と言われた添田や伊藤、杉田らが次々にトップ100の壁を突破した2010年台。だが、その相乗効果と上昇気流が「慢心にも似た空気」を醸成したとすれば、皮肉だ。

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