かつての天才少女・奈良くるみが引退、独占インタビュー。「がんばれているから、辞めてもいいのかな」 (4ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

錦織圭に教わった技術で優勝

 2013年以降トップ100を維持した奈良だが、2019年以降はランキングを落とし、グランドスラム本戦に出られない時期を過ごした。

 2020年には「本気で辞める」と決意したとも明かす。ただ「それは逃げ」であることは、本当は自分でもわかっていた。

 そこからもう一度気持ちをつなぎ止め、今年5月には錦織圭にリターンの指導も受け、その成果を発揮し直後の韓国開催のITF大会で優勝。

「がんばれているから、辞めてもいいのかな」との思いが「降ってきた」のは、優勝の翌日だった。

 錦織に引退の意向を伝えた時、彼は「引き止めたいな」とだけ言ったという。

 盟友の土居に打ち明けた時は、奈良いわく「あのドライなみっちゃん(土居の愛称)」が号泣した。

 最後の試合後にコートで行なわれたセレモニーには、10人を超える現役日本人選手が集い、観客席には家族や友人に交じり、引退した元選手たちの姿もあった。155cmの小さな身体で妥協せず、自分にも他人にも誠実な姿勢で、誰からも愛された14年のプロキャリアだった。

 ひと言で表すと、どんな選手生活でしたか?

 ラストマッチから2日後。最後にたずねた漠然としたその問いに、彼女は明るい笑顔と、まっすぐな言葉で答えた。

「つらいこともあったけれど、テニスが嫌いになったことはなかったです。小さい頃から注目されるのは楽しかったし、そのなかで勝てることがモチベーションでした。テニスが自分を輝かせてくれるという思いは、ちっちゃい頃から変わらないので。

 苦しいこともありましたが......でもね、ほんっとに楽しい! わいわい楽しいってわけじゃないけれど、ほんっとに今までやっていて、もう一回ちっちゃいころからやり直したいくらい、自分の人生よかったなって。支えてくれる人の縁や出会いにも恵まれてきました。なので生まれ変わっても、絶対にもう一回テニス選手になりたいなって、すごく思います」

 あ、ぜんぜん、ひと言じゃなかったですね----。そう言い彼女は、また恥ずかしそうに笑った。

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