日本女子テニス界に新星現る。鮮烈デビューを果たした本玉真唯とは何者?

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 本玉真唯----。国内に200人もいない、という珍しい苗字を持つ22歳の選手が、先週、世界のテニスシーンに名を示した。

 WTAツアー大会のシカゴ・フォール・テニス・クラシックで、予選から勝ち上がりベスト8へ。「ほんたま・まい」というリズミカルな名を体現するかのように、164cmの身体がコート上を躍動した。

ツアーデビュー戦でベスト8という快挙を成し遂げた本玉真唯ツアーデビュー戦でベスト8という快挙を成し遂げた本玉真唯 この大会がWTAツアーデビュー戦だった「本玉」の名は、日本のテニス関係者の間では、ジュニア時代から広く知れ渡っていた。

 なかでも大きかったのが、大阪市開催の世界スーパージュニアでの優勝。トッププロへの登竜門を制し、1990年代に世界24位に達した神尾米氏に師事することで、本玉は本格的に世界への道を歩み始めた。

「このままのプレーではダメだよ。世界では勝てないからね」

 その神尾氏がこの晩夏、はっきりと本玉に告げたという。師の言葉を聞いた本玉が、相当に驚いていたのだとしても......。

 この夏、本玉はキャリア最高ランキングに達し、全米オープンの予選に参戦した。グランドスラムの予選は初挑戦ながら、1回戦も突破する。本人にしてみれば、今が最も勢いに乗っている時......。

 だが、コーチの目には、異なる景色が映っていた。

「全米オープンの試合を見た時、本当に大人と子どもみたいだった。やっぱり差があるなって」

 神尾氏には課題が明確に見えており、その改善なくして、上のレベルに行くのは難しいと感じられた。

 ただ、結果は出ているなかでの変革に、本人が戸惑うだろうこともわかっている。だからコーチは、本人に尋ねた。

「グランドスラムで戦いたいなら、変えなくてはいけない。でも、下部ツアーで勝ちたいだけなら、今のままのテニスでもいい。あなたは、どちらで勝ちたいの?」と。

 やります----。返ってきたのは、上を目指す言葉だった。

 ジュニア時代に結果を残した本玉だが、その後の足跡は、必ずしも一足飛びだった訳ではない。神尾氏が「完璧主義者」だと評する性質は、向上心の源泉ではあるが、時に進む足を鈍らせもする。

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