大坂なおみ、混乱からの脱却。コーチはいつ「勝利を確信した」のか (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 このエースを皮切りに4ポイント連取で危機を切り抜けた大坂は、続く相手のサービスゲームでは、「私のリターンはよくなっている。相手も重圧を感じているはずだ」と感じていた。たしかに第3セットでの大坂のリターンポイント獲得率は高く、とくに相手のセカンドサーブでは7割以上を叩き出していた。

 その実績を自信に変え、彼女は深いリターンからストローク戦の主導権を握る。「長いラリーに持ち込んで、ここぞという時に決めに行く」という策は、終盤の2連続ウイナーとして完遂された。

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 このゲームをブレークし、ゲームカウント5−5に並んだ時、彼女は「試合前にウィムが教えてくれたことを思い出し、すべてが噛み合い出した」という。

 その時、ボックスに座るコーチも「試合前に話していた作戦どおりに戦えている」と、勝利の確信を深めていた。

 大坂が試合中に体感したサーブやリターンの向上と、客観的な数字が合致したのは、実は偶然ではない。

 フィセッテはコーチに就いて以来、試合後にさまざまなデータを大坂に示してきたが、最近では大坂のほうから「私のウイナーとエラーの比率は?」「セカンドサーブのスタッツは?」と聞いてくるようになったという。それらデータは、時に身体的感覚と乖離していたこともあった。ただ、実戦とデータ照合のプロセスを重ねるうち、両者は徐々に重なってきたのだろう。

 戦前に得た情報と実感が噛み合っていくように、あるいは試合中の体感とスタッツが合致するように、コーチをはじめとするチームの教えと大坂の思考も、同じ方向を指して重なり合っている。

 準々決勝の相手は、ムグルサとはまったくタイプの異なる"業師"のシェイ・スーウェイ(台湾)。過去に幾度も苦戦を強いられた難敵だが、今の"チームなおみ"なら必ず勝機を見いだせるはずだ。

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