2021.02.15

大坂なおみ、混乱からの脱却。コーチはいつ「勝利を確信した」のか

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 相手のショットがラインを割るが否や、ファミリーボックスの面々は一斉に拳を振り上げて立ち上がり、円陣を組んで喜びを分かち合った。

 これまでは、勝利を見届けると席を立つことの多かった"チームなおみ"の面々が、この時はオンコートインタビューを最後まで見守り、力のこもった拍手を送る。

勝負どころでポイントを奪って叫ぶ大坂なおみ 安堵と憔悴の色を顔に宿すコーチのウィム・フィセッテに「寿命が縮まったのでは?」と声をかけると、「僕、本当は20歳なんだよ。すごく老けて見えるだろ?」と、ややぎこちない笑みでジョークが返ってきた。

 歓喜と疲労と、それら情動の共有と----。チームの絆と、それがあってこその勝利であることが、克明に浮かび上がる光景だった。

「タフな試合になることは、戦前からわかっていた」とは、大坂なおみとコーチの両者が、試合後に口にした言葉である。

 グランドスラムの4回戦は、大坂にとって常に、優勝か否かの分水嶺。相手は元世界ランク1位にして、2度のグランドスラム優勝を誇るガルビネ・ムグルサ(スペイン)。そして両者は、初対戦。

「タフな試合」になる材料は、たしかにすべて揃っていた。

 昨シーズンから大坂のコーチに就任したフィセッテは、データ分析と戦術立案に長けた知将として名を馳せる。初対戦となる強敵との対戦前も、フィセッテはさまざまな"レクチャー"を行なったという。

「いつものように、ビデオ・プレゼンテーションをした。ガルビネのサーブの球種やコース、彼女の弱点を示した」

 そのうえで、いかにして相手からポイントを取るか、そして勝利を得るための戦術についても話し合ったという。

 ただ、いかに動画を解析し情報を得ていても、ネットを挟み対峙した時に目にする光景や、相手から覚える威圧感は、実際にコートに立ってみなくてはわからない。

 ましてや、大坂は試合前からムグルサに対し、ある種の「畏敬の念」を覚えていたと言った。

「彼女はとてもプロフェッショナルで、感情を表に出さない。それは本当にかっこいいと思う。