錦織圭、30歳になって心境の変化。「残された時間」に何を思う (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO


"追う者"あるいは"年少者"は、テニスプレーヤー錦織圭を形成する重要なファクターかもしれない。

 錦織が父親の手ほどきで初めてラケットを握った5歳の日から、彼のかたわらには常に、4歳年長の姉がいた。この時期の4年間が、フィジカル面でどれだけの差を生むかは想像に難くない。小柄な身体で知恵をしぼり、あの手この手を講じて姉に立ち向かうが、勝てない日は長く続いた。

 錦織は、自分を「究極の負けず嫌い」だと定義する。その彼に「どうして子どもの頃は毎日お姉さんに負けていたのに、テニスが嫌にならなかったのか?」と尋ねたことがある。

 すると彼は、目をパチクリとさせて「たしかにそうですね、なんでだろう? やめていてもおかしくないですよね」と、無邪気に自問し小首をかしげた。現に彼は幼い頃、家族とのトランプやカードゲームで負け始めると、「眠い」と中座し部屋に向かうこともしばしばだったという。

 ただ、テニスは違った。その「なぜ」に対し、彼はしばらく考えたあと、自分に問いかけるように言った。

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