大坂なおみが「U字」の1年に幕。多く泣いたが「去年よりよかった」 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 一方で、連勝を止める原因となったケガをいかに予防するかは、「学ぶことが多かった」と振り返る今季で得た課題のひとつだろう。これまで大きなケガのないキャリアを送ってきた大坂ではあるが、勢いに乗りかかったところで痛みに襲われ、上昇気流を逃すのは珍しくなかった。

 今季も、8月のシンシナティ大会でひざを痛め、USオープンには不安を抱えたまま挑んだ。昨年のWTAファイナルズも、足のケガで3試合目を途中棄権。それ以前にも、腹筋などに負った小さなケガのため、棄権や大会欠場を幾度か繰り返した。

 今回の肩も含めた、これらのケガの原因として、大坂はひとつの可能性に言及した。

「今まで負ってきたケガの箇所の大部分は、小さく弱い筋肉だった。そういう部分に対するケアもしっかりやるようにと言われてきたが、自分の意識が足りなかったのだと思う」

 だからこそ、「弱い筋肉強化に特化したエクササイズが必要」だという大坂は、早くも来季に目を向ける。

「今の私がやりたいことは、ものすごくハードにトレーニングすることなの。昨年のオフシーズンは、全豪オープンに向けて厳しいトレーニングをこなし、だから大会では身体がよく動くと感じた。今季も、また同じことをやりたい」

 激動の2019年シーズンを終えた今、彼女は、何が成功の理由で、何がつまづきの原因かを理解している。USオープン以降、臨時で父親が務めたコーチの席に就く者も絞り込まれているようだ。大坂陣営からは、「誰もが納得する、ベストのコーチだ」との声も聞こえる。来シーズンに向けての戦いは、すでに水面下で進められているのだろう。

 10月16日に22歳を迎え、周囲も慌ただしい動きを見せている大坂だが、当人が目を向ける関心事項は、「よりよいテニスプレーヤーになることだけ」だと言う。

 多くの涙を流してなお、彼女は「今季のほうが、去年よりいい1年だった」と言った。

 辿ってきた「U字」のその先は、上昇曲線を描いたまま、2020年へと続いていく――。

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