姉妹のようなふたり。土居美咲と日比野菜緒のよく似た成長曲線 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 その日比野もまた、頃を同じくしてランキングとモチベーションを下げ、7月上旬のウインブルドンは大会そのものの出場を見合わせる。この頃のふたりは、ともにテニスから少し距離を置き、自身と向き合いながら答えを手探りで模索していた。

 苦闘を続ける両者の転機は、昨年8月にカナダ・バンクーバーで訪れる。

 ツアーの下部大会開幕よりひと足早く現地入りしたふたりは、ホームステイ先をシェアし、大自然のなかでのハイキングやバーベキューなどを堪能した。そうして心身ともにリフレッシュし迎えた大会で、日比野はベスト4へと勝ち上がり、土居は予選の戦いから頂点へと這い上がる。

 それはふたり......とくに土居にとって、「自分の奥底にある何か」が揺り動かされた瞬間だった。

 その、最浮上の契機から約1年――。

 土居と日比野はツアー大会、それも日本開催の大会で、シングルスの決勝へと駆け上がった。準決勝の当日には、まずは日比野がひと足先に決勝の席を確保し、数時間後に土居が続く。日本人決勝を実現したふたりは、試合後のジムで「じゃ、がんばろー!」の言葉とともに、ハイタッチを交わしたという。

 そんなふたりの決戦が日比野の完勝に終わったのは、相手をよく知っていたがゆえの落とし穴に、土居が陥ったからかもしれない。日比野のバックハンドの強さを知る土居はフォアサイドを狙ったが、日比野は時にスライスで打球を巧みに制御しながら、根気よくラリーを組み立てた。

「彼女にフォアで組み立てられたので、自分の形にするチャンスをもらえなかった」と土居が振り返れば、日比野は「みんな私のフォアを狙ってくるので、自然と鍛えられました」と笑みをこぼす。

 短期間で弱点を克服した、日比野の成長――。それこそが、土居の攻撃テニスを狂わした最大の因子だろう。

 試合後のセレモニーでは、まずは準優勝者が、「菜緒ちゃん、おめでとう。私もなんとか対応しようとしたけれど、菜緒ちゃんのプレーがすばらしかった」と、涙をにじませて勝者を称える。

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