大坂なおみ、コーチ変更の理由は原点回帰。「始まりの地」でリラックス (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by Getty Images

 父親が球出しするボールを打ちながら、何が必要なのかを考え、正しい方向を自ら模索する――。まるで父娘の対話のような練習を、彼女は今、望んでいたのかもしれない。

 そのような、父親との練習で体得した「自分で答えを見つける」という習慣は、今大会の初戦で、大坂を勝利に導いた要因だっただろう。

「とても勝ちたかったから、ナーバスになっていた」という世界4位は、サーブの制球に苦しみ、181位のビクトリア・トモバ(ブルガリア)相手にいきなり2連続ブレークを許す。センターコートに詰めかけたファンたちは、まさかの展開に深い悲鳴に似た声を漏らした。

 だが、そんな周囲の不安をよそに、コートに立つ大坂は、冷静に現状を分析していたという。

 自分の立ち上がりが悪いであろうことは、言ってみれば想定内。相手の緩いボールや、高い軌道のボールにタイミングが合わず、手こずってはいたが、どこかで捕らえられるだろうとの思いもあった。そしてひとたび適応さえできれば、「パワープレーヤーである自分が主導権を握れる」と感じ、だからこそ慌てずに済んでいたという。

 本来ならフォアで攻めたいところを、相手に執拗にバックをつかれたことも出遅れた一因だが、「無理にストレートに打つのではなく、チャンスがあればアングル(鋭角)に打っていこう」と判断し、実際にそうすることで相手の攻め手を封じていった。両セットともに追いかける展開ではあったものの、終わってみれば、7-5、6-3の順当な勝利である。

 試合後のオンコートインタビューでは、好物のたこ焼きはすでに食べたと告白し、「でも、お好み焼きはまだ食べていない」と続けて、大阪のファンを沸かせた。

 地元での試合はどの選手にとっても、サポートと重圧の正負双方を背負いながらの戦いとなる。だが、大坂は「どの町でプレーしても、プレッシャーにはならない」と断言する。

 それでも、彼女はどうしても、今大会で優勝したいのだと言った。

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