大坂なおみ、コーチ変更の理由は原点回帰。「始まりの地」でリラックス
「オオサカ生まれの人は、全員、オオサカさんになるのよ」
そんなジョークで彼女がアメリカの記者たちを笑わせたのは、もう5年前のことである。
地元でのプレッシャーを楽しさに変え、順調に初戦を突破した大坂なおみ カリフォルニア州開催のWTAツアー大会に予選を勝ち上がって出場すると、彼女は初戦で当時19位のサム・ストーサー(オーストラリア)を大接戦の末に撃破した。
まだ16歳、国籍は日本、オオサカ・シティ生まれのオオサカ・ナオミ――。
大会のメディア担当者ですら、彼女に関してその程度の情報しか持ち合わせていなかった。ほぼ無名の少女による、あまりにセンセーショナルなツアーデビュー戦である。
その当時の無名の少女は今年、2度のグランドスラムホルダーとして、3歳まで過ごした生まれ故郷に帰還した。
例年は東京の有明コロシアムで開催される東レ・パンパシフィックオープンだが、同会場が東京オリンピックに向けて改装中のため、今年は大阪市開催の運びになった。会場は、西区にある靭(うつぼ)公園内の靭テニスセンター。そこは、父親と姉・まりが練習する横で、幼き日のなおみが戯れにラケットを振りボールを追った、言わば始まりの地である。
今年、その始まりの地である靭テニスセンターの練習コートに向かう彼女には、トレーナーの茂木奈津子にパフォーマンスコーチのアブドゥル・シラー、そして両親が付き添っていた。今年の3月にコーチに就任したジャーメイン・ジェイキンスとの契約は、全米オープン後に解消。今大会には父親が、コーチとして帯同している。
ではなぜ、今このタイミングでのコーチ変更だったのか?
その問いに対し、大坂は「何かを変えるには、今だと直感した」と言った。
「もちろん、このタイミングでのコーチ変更は、リスクはある。でも、父は私のテニスの原点なので、そこに戻るという意味合いもあった。
一緒に練習していると、子どもの頃の感覚が戻ってきたように感じるの。父はそれほど多くを語る人ではないけれど、だからこそ、自分で答えを見つけなくてはいけないし」
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