2019.07.17

ウインブルドンJr.を制した16歳、
望月慎太郎はコートに立つと豹変する

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO, Nakamura Yutaka

 暖かな拍手が降り注ぐ「ナンバー1コート」のスタンドの三方向に向け、深々と頭を下げる。

 表彰式のフォトセッションでは、フォトグラファーたちから「トロフィーにキスして!」とリクエストされ、溶けそうに照れながら、ぎこちなく優勝の証(あかし)に口を近づけた。

全英ジュニア男子シングルスを制した望月慎太郎「スタンドに手を振るとかは、恥ずかしくってできないです。お辞儀だって恥ずかしいのに……」

 目尻を下げ、首をすくめるようにしながら打ち明ける姿は、本人いわく「シャイ」そのもの。だが、先月16歳を迎えたばかりのそのシャイな少年が、ひとたびラケットを手にコートに立つと、凛とした闘志をまとうアスリートに豹変する。

 少し背を丸め、ボールに飛びつき鋭くラケットを振り抜くと、山猫のようにしなやかな身のこなしでネットへと走り、時に柔らかなボレーを沈め、時に豪快なスマッシュを叩き込む。多彩で攻撃的なプレースタイルを支えるのは、いかなる危機にも動じぬ強心臓だ。

 1回戦では、最終セットで終始リードされながら剣ヶ峰で追いつき、逆転勝利を掴み取った。準決勝では、3本のマッチポイントをしのがれ逆転を許しながらも、今度は相手のマッチポイントを強気のプレーで切り抜け、土壇場で試合をひっくり返した。

 勝利の瞬間には、オフコートでの温和な笑顔からは想像もつかない、雄々しい咆哮(ほうこう)をあげる。ウインブルドンJr.で、日本人男子として初めて頂点に立った望月慎太郎は、175cmのまだ細身な身体に、カラフルなプレースタイルとパーソナリティを備えたテニスプレーヤーだ。

「しんちゃん、すごくいいですよ」

 IMGアカデミーで腕を振るう中村豊トレーナーから、「しんちゃん」こと望月慎太郎の名を聞いたのは、今年1月の全豪オープンの時だった。

 IMGで錦織圭らを少年時代から指導した中村氏は、マリア・シャラポワ(ロシア)のパーソナルトレーナーを経て、昨年から再びIMGで、フィジカル&コンディショニングのヘッドトレーナーとしてジュニアからトッププレーヤーまでを指導する。その彼が、望月の、竹のような身体のしなりや、周囲の情報を感知し瞬時に判断していく能力の高さに、太鼓判を押した。